スマトラレポート(3)
─つづき─
「マジかよ、おいおい」
「ねぇ、雨だよ」
ほんとだ、雨だ。しかも本降りの。瞬時に地面がぬかるんだ。
こんなに普段はまじめに働いているというのにどうして休日で更に山ん中で降ってくるのでしょうか。
シクシク。
とりあえず心配なのはエントランスに置きっぱなしの荷物。
あそこまで片道で10分くらいだろう、たぶん。
外気がどんどん冷たくなってくるのでズボンを穿き替え、バリで買ったジッパーの上着を羽織る。
「助かったね、この屋根が有って。ここがなかったら路頭に迷うところだったよ。
ずぶ濡れになりながらさ。想像しただけでもやんなっちゃうよね」
友人が少し湿った煙草に火を付けながら続ける。
「それにしても・・、止まないな。」
なんとなくキャンプとか続けているとその雨がすぐに止むタイプなのか、
それともずーっとガツンガツンと降り続けるタイプなのか、肌で分かる。
今日の雨はそんなにすぐには止まないだろうけど、朝までは降らない筈だ。
どうして分かるのって聞かれても困るけど。
「取りに行くしかないみたいだね」
僕が友人に言うと友人は、戦争映画に出てくるジャングルに突入する兵士のような顔をして
「そうみたいだね」と2個しかない雨カッパのうちのひとつを取ると今来た山道に目を向けた。
僕もなんとなくそっちのほうを見た。でっかい水溜まりにバシャバシャと雨が跳ねている。
エントランスのスタッフは僕らの荷物を雨が濡れないように、
自分達のスペースのところまでよけといてくれた。
久しぶりにこんな気持ちのよい心遣いのあるパーティに正直僕らは感動した。
「ありがとうございます」僕らが深々と頭を下げてお礼を言うと、
彼らは「いいよ、いいよ。頑張ってね」と声を掛けてくれた。
小さい事かもしれないけれど嬉しいよ。
よしっ、頑張って運ぼうではないか、友よ。
待っているのは満タンに詰まったクーラーボックスとビールとテントと七輪セットが詰まれているキャリーだ。雨がカッパを通り越してももう気にしない。
びしょ濡れになっている姿は、きっとレンジャー部隊みたいな筈だ、きっとね。
─もうちょい続くかな─