12月のバストーニュは、とても寒くじっとしているとまるでダンスしているみたいに震えが止まらなくなる。
けれどいくら寒くて雪が吹きつける夜でも焚き火をするのは命取り。
目前にせまるドイツ軍に我々はここでまぬけ面して待ち構えているんだぜと、場所を教えるようなものだから。
今夜も雪が降ってきた。果たして我々はここを突破できるのだろうか。
近くではドクと呼ばれる衛生兵がさっきからモルヒネを探している。
「ねぇ、モルヒネは余ってないかい?」と。
そう、我々にはトータル的に物資が足りないのだ。
ドクがまた誰かに云っている「靴下は変えないとだめだ。足が凍傷になる。必ず変えるんだ」。
バストーニュ。長くて寒い夜。我々はここを突破しなくてはならない。
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今でも寒い晩は妻に言うんだ。゛バストーニュじゃなくてよかった"ってね。
Band Of Brothers『第六話─衛生兵』