日曜日は二の酉だったので初めて浅草・鷲神社に行った。
毎年、酉の市は新宿の花園神社に行くと決めていて、今年も一の酉は新宿へ向かい、
見世物小屋の変わらぬ姿や飴細工の屋台などを囃しつつ楽しんだ。
友人夫婦は熊手を購入し、僕は僕で、まだ冬になる前の酉の市にしては暖かい中、
ラムネやら焼きソバやらを買って所狭しと見聞していた。
おおよそ一の酉というのは最近だと気温が暖かいのが定番。
「酉の市だというのにあったかいよね~」というがどうも我々の口癖のようである。
ということは二の酉ともなればきちんと寒くなり1月に相応しい季節が訪れるというのも定番で、
この日は、やはり寒かった。
そういえば天気予報のキャスターも前日の土曜日には、東京では木枯らし一号が吹き荒れ・・・、とニュースを読み上げていたっけ。
さて、その浅草の酉の市、花園神社しか知らない者には見る物写る物全てが新鮮で、同じ熊手を商売としているのにこんなにも違うのかと思う場面ばかりだった。
正直、熊手になんて値段こそは違えど装飾や形には大した違いなんてないでしょうとタカをくくっていた。
だって七福神が乗って、鯛が乗って、しめ縄が締めてあるとかそんなんでしょ。
それがどうだろう。永遠と屋台が並ぶ祭り通りを抜けて、鷲神社の鳥居から入って見た熊手のその圧巻とした絢爛豪華っぷりは。
まず熊手を装飾している小物群の数が徹底的に浅草のほうが多い。
小槌やら七福神もそうだけど招き猫がびっしりと乗っていたり、
梅と桜で色鮮やかに縁取られていたり。
傍目八目の顔がそのまんま熊手になっているのなんて花園には無いぞ。
三基も神輿がついている熊手なんてお幾らするのかしら。
あとなんといっても目立っていて必ず足を止めて見ちゃうのが孔雀の羽を広げるように千両小判がいっぱいの熊手。その緻密的なデザインといい、もうゾクゾクしちゃう。
浅草の酉の市には、いわゆるアレ系の人(頬っぺたに手を当て傷をつくるジェスチャー)が客でも売り手でも少ないようで、特に売り手の皆様は伝統工芸を尊重している屋台が大半をしめている。
少しだけお話をした売り子さん(といっても40代、50代の粋なおじさん)曰く、「花園は確かに〝いちげんさん〟が多いけれども、うちは商売をするお客さんばかりだからねぇ。どの店見ても商売繁盛の熊手があるでしょ。花園とはそこが違うんだよ。だから芸人さんも歌舞伎の人も浅草で買うのが主流なんだよ。あとは全国各地の人が来るのも浅草の特徴かなぁ」。
なるほど、言われてみれば商売繁盛の熊手がどこにもあるし、某企業、某有名人の名札がたくさんあった。
全国各地というのも頷ける。なぜなら鷲神社に入る寸前に佐川急便が「浅草・酉の市」と記載された専用のダンボール箱で熊手を梱包しているのを見たからだ。
もちろんここで売っている熊手は値段もそれなりの金額なので値が張ることは確かだけど、
きっと商売をしていたら買いたくなる。
不景気なんてどこ吹く風。
三本締めの掛け声がいつまでも響いていた。
「商売繁盛、商売繁盛!イヨォー・・・」。