2004年12月29日

東陽カレー

最終出勤日に雪が降る~。
電車もそれほど混んでないってことは、昨日までだった会社が多かったのかね。いつもと打って変わって数名しかいないがらんとしたフロアの窓から眺めますとけっこう吹雪いています。
でもラスト吉野家氏デイということですからお昼はみんなで仲良く外食。
すると首尾よく某Ney氏のクルマが。一緒に昼飯をということで、ジャンカレーを食べに行く事に決定。

ところで、どうもこの駅の周辺のカレーを出す店は量が半端じゃないんだけど気のせいか。

何処で食べてもやたらとボリュームがある。そんなに食事が出来る店が多いわけでもないし、むしろ少ないくらいでそれに便乗した庇護にくるまれた店がヌクヌクとしつつ、高くてたいしたことの無いランチを出す地域なのに。

たぶん僕らの知らないところでカレー戦争みたいなし烈な争いが実は繰り広げられていたのかもしれない。

それは大いにありえる。

ただ僕らはその大戦後のカレーピープルだけに、なぜどこも大盛りなのかは気がつかないままパクパクとカレーを食べているのだ。

カレーは多くて当たり前。でもその裏には黄色くてスパイシィな涙無しには語れない想像を絶する物語があったのだ。

その歴史に刻まれたファンキィなイーストパシフィック物語を今日は特別にプレゼントforユー。

キッカケは些細な事件からである。戦前のお話だ。
コックやマスターはカレーについて哲学的に悩む必要すらなかった。
それは本当に古き良きカレーな時代ともいえる。
誰もが今日という一日に感謝して、カレー皿を洗ったりルゥを溶かしたりして日々を過ごしていた。
たまに売り切れることがあっても目くじらを立てる者なんて一人もいなかった。もしそんなこと誰かが行ったら人々は真剣に首を傾げた事だろう。

もしかしたらアナタはそんなのは単調なカレー世界じゃないかと毒づくかもしれない。

けど、どうだろうか、今のこの私欲や権力争いに巻き込まれるカレー時代を考えてみたら。

おちおち眠れない夜だってあるじゃないか。

どっちが善いとは誰にも言えない。血気盛んな若者達がむしろ今の時代を喜んでいるのも事実だ。
大切なのは「歴史が選んだ」ということ。我々はそれを忠実になぞるだけだ。そう、二極論的な話題は避けよう。

ある日突然、Aという店が「よし、ウチは思い切ってここはドォーンと大盛りにしよう」という風に決意した。

別に大した意味もなかった。

Aという店だってそれが導火線となり巨大なカレー戦争に発展するなんて夢にも思わなかった。

けれども、これが大問題だった。横並び主義で新規参入も無い平和なカレー世界からある日ミュータントが前触れもなく生まれたのだ。

亜種はいつだって目立つ。
歴史はいつだって残酷。

後にAのマスターは述懐する。

「いや、ウチも何もいやらしい魂胆なんてありませんでしたよ。ただ、大盛りにして何が悪いっていうんですか。そこですよ、そこ。役所じゃあるまいし。ウチはカレー一本で飯を食ってきて、娘や息子も学校に行かせたんですよ。お客さんだってウチのカレーを好んで食べてくれる。遠くからはるばるやってくる人だっているんだ。なんも世間様に背を向けるようなことをした覚えは無いね」

やがてAが撒いた火種がBという店に引火した。

天気の良い清々しい火曜日の昼下がりの事だ。
Bからしてみれば宣戦布告である。

「て、店長、まじやばいっすよ。こないだ友達とAにカレー食いに行ったんですけど、あそこの大盛りとんでもないんすよ。すっごい量。それを狙ってすっごい客。ほらっ、あのウチによく来ていた面接官ってアダナの眼鏡掛けたサラリーマンいたじゃないですか、あいつとかもAで食べているみたいなんすよ、客足が増えてるし。ウチの客持ってかれちゃうじゃないですか。潰されちゃいますって。きったねぇな、大盛りにして客の目を引くなんて。ねぇ、店長、店長ってば。聞いてます?」

店長はしゃもじを持ったまま立ち尽くしていた。

「Aが大盛りを?」

それはまるで幼なじみが自分の初恋の女の子と結ばれた知らせのようにも聞こえた。
突然舞い下りた予期しない不幸な出来事のように感じた。

何か間違っている、彼は思った。ただA が大盛りにした以上、うちが大盛りにしないわけにはいかない。そんな複雑な気持ちがか彼を困迷させた。

と、ヤクザな大盛りのジャンカレーのカツカレーをパクつきながら妄想していました。だってそれくらい多いんだもん。

*

さて、今日は送別会と忘年会。

前述しましたがこの部署に異動してからずーっと上司であった吉野家氏が今日がラスト。
北でもなく南でもなく東ということで。

メンバーの中じゃ僕は短い付き合いだったけれど、本当に言葉に出来ないほどお世話になったし、勉強になりました。どれくらいのことを氏から学んだであろうか。
鋭い意見とユーモアと思いやりがあって、仕事は完璧、最高の人物だ。
心からお礼を申し上げ、前途を祝いたい。

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投稿者 ko : 2004年12月29日 15:05
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