2005年01月27日

20021216小倉ライフ

スペースワールド駅を通過する時に決まって鳴り響く、宇宙船が到着したようなサイレン音を聞く度に少なくとも気持ちの良い朝であれば、私はその鹿児島本線の可愛らしい演出に好意的であり、ちょっとしたきっかけすら与えられすれば、この駅で降りてもいいかなとさえ思う。

冬のスペースワールド駅はどこかそのような魅力がある。

駅からそう遠く離れていないあの観覧車に乗れば私が住んでいる小倉の街も見渡せるだろう。

想像が私の脳を刺激し衝動が生まれる。
冬の澄んだ空を眺めながらの観覧はきっと爽快だ。
皿倉山を眺めるのも。

けど、もちろん私はそんなことはしない。
私が降りるべき駅はもうひとつ先にあるからだ。

八幡駅、北九州小倉から15分。なんてこと?、28歳の12月に私が九州にいるなんて!

そう思うと心臓が高鳴る。
でも同時に私は理由もなく不安を憶える。周りの色彩が狂い始める。

徐々に透明な水に沈みながら空気がどんどん薄くなり、真上の水面には太陽の光が淀みもなく揺れているイメージ。そんな気分だ。

目を閉じてじぃっと心を落ち着かせる。
東京からの急な移動でまだその土地に慣れていないだけ。
落ち着けば元に戻る。私はこぶしを少し力をこめて握りそっと車窓から見える冬の景色にもう一度目をやる。マフラーを大事そうに纏い足早に前乗りで歩く人が見える。彼らはどこに向かうのだろう?

昨日の晩、私は夜の22時に会社を出た。残業だ。
あたりは漆黒につつまれて何もない。
左手にはどこまでも果てしなく続く空き地がある。潜水艦の底のような場所。

砂漠の大地に聳え立つラスベガスみたいにゴージャスなスペースワールド。

きっと私はその景色を忘れない。
私が立つ場所から、眩しいくらい透明で、幻想的な観覧車がライトアップされている。

私はいくらだって見てもいい。眺めるほど胸がシンとする。
塵の重なり一つ聞こえずに、20分に1本走る鹿児島本線のゴトゴトという音だけが時々聞こえる。

12月の22時。5分も立っていれば寒くもなる。
でも私は見ていたい。
私は見ることを許される領域に一個の生物体として、いまこの瞬間、存在している。

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投稿者 ko : 2005年01月27日 23:16
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