新宿にあるJAZZ喫茶のどれか一つを選ぶとなったら、少し気の利いた人間で珈琲にも酒にも目がなくて、やっぱ音楽が好きという人間は、紀伊国屋書店の裏手にあるDUGをチョイスするだろうし、現代小説(そんな文学ジャンルがあるのかどうか知らないけれど)にアンテナを張りつつ、ベストセラーを読み漁り、「ノルウェイの森」なんかもしっかりと押さえているような人間だったら、やっぱしDUGをチョイスするだろう。
「ああ、ここが主人公のワタナベがドイツ語の授業が終わった後、緑と入った店か」と。
紀伊国屋の裏手、つまり靖国通り沿いに面したこのDUGは、狂騒ともいえる新宿の街のエアーポケットみたいな店で、ひっそりとその地下に佇んでいる。
HPによれば、まだ新宿に都電が走っていた1961年にオープンした。
映画小説、諸先輩方のお話から想像するに過ぎないけれど、当時といえばJAZZ喫茶は若者たちの最先端の溜り場であり、文化の生まれどころであった。DUGもその中のひとつで、今となっては貴重な〝生き残り組〟、その半生は言葉じゃ語れないドラマもあったし、時代と共に幾度となく店の移転もあったという。それでもなお現在、当時を知らない世代の僕らでも一度その店内に入ると、その頃の熱い息吹を感じることができる。
もしかしたらワタナベ君と緑がウォッカトニックを飲みながらピスタチオを齧っているかもしれない。
今でも夕方を過ぎて、夜の帳が訪れる時間となると、JAZZのライブを頻繁にやっている。それはそれできっと素晴らしいだろうけれど、個人的にはDUGは平日休日に関係なく、昼下がりに入店するのを強く勧めたい。
外の喧騒とまったく正反対の店内、その日がソーダーを零したように突き抜ける青空の晴れた日なら、なおのこと、照明の落とされた店内が不思議と居心地が良いことだろう。
昼間からお酒を飲むことを敬遠しているあなたもここじゃ堂々と飲めるってものだ。
最高の音響でグラスを傾けるのも、芳醇な珈琲豆を愉しむのも、その日の風向きに任せればいい。
DUG
新宿区新宿3-15-12
Cafe Time12:00~18:30
Happyhour18:00~20:00 DRINK ALL \530
Bar Time 18:30~26:00
生ハムとカマンベールチーズのベーグルサンド \630
ほうれん草とベーコンのキッシュ \420
アッサムミルクティー \630