・吉田修一「パレード」
・森博嗣「スカイクロラ」
・COYOTE「星野道夫」
「パレード」
〝いま〟の時代を顕わす固有名詞を作品にさりげなくちらつかせ、その固有名詞にまで作者の息吹を注ぐことができるのは果たしてこの作家以外にいるだろうか。〝笑っていいとも〟、こんな言葉だって、吉田修一のマジックに掛かれば、変幻自在を起こして力を持つ。
世田谷の千歳烏山のマンションで奇妙な共同生活する若者達5人の物語を、章ごとにそれぞれの視点から描いたこの作品。怖いほどドライな都会の人間関係。ある時、ひょんなことからもう一人増えた共同生活者が登場することによって話が一変し、急展開を迎える。第5章を読むことによって吉田修一が見た人間模様が浮き彫りになっている。はっきりいって怖い。一文ごとに彼の言葉に対するストイックさが汲み取れる。
第15回山本周五郎賞受賞作。
「スカイクロラ」
森博嗣に代表するようなミステリー作家をいままで読むことがなかったので、よい機会と思い、購入。Deltazulu氏お勧めの作家でもある。遺伝子改良によって生まれた「子供」たちは決して「大人」になることがない。彼らは戦争の戦士として活躍し、感情がなく(というよりは理解できなく)、やはり改良されていない人達から比べれば特殊な存在だ。主人公のユーヒチは優秀なパイロット。戦闘機に跨り、ただ死ぬキッカケを待ちながら今日も敵を倒す。やがてユーヒチは草薙という、やはりキルドレである成長しない子供と出遭い。。。
実際に工学博士という彼が噤む文章は理路整然とした気持ちのよい文章。理系的文系スタイルとでも言おうか、物語のある説明書を(失礼)読むようにスラスラと読める。それはきっと作者のそのような職業的経緯から生まれる意識なんだろうと思う。エッセイも多く出している。。
「COYOTE」
96年、不慮の事故で無くなった星野道夫の特集「星野道夫の冒険 ぼくはこのような本を読んで旅に出かけた」 ズバリ星野道夫の残した蔵書のリストが載っている。