・山本 昌代 「デンデラ野」
「デンデラ野」
「豚神祀り」「デンデラ野」「春のたより」の短編3部作で綴られる作品。日本の何処にでもありそうな団地で繰り広げられる嫁と姑と核家族を如実に描いた「デンデラ野」。デンデラ野とは俗に言う姥捨て山のこと。嫁と嫁の長男である自分の三男とその息子に挟まれつつ、自分の老後の行く末にぼんやりと不安を抱きつつも、毎日を過ごす扶養家族のおばあちゃん。おばあちゃんが敢えて家族の集まる居間に布団を敷いて寝るシーンはリアルな現実だ。
今の日本の誰もが直面するような問題と日常を絡めつつ、物語の全編に漂う哀愁がたまらない。文章に荒々しさがあって読みづらい箇所も目に付くとしても、構成がしっかりしているのでさほど苦にならない。 from TK野氏。