現在ヒッピー族が、すべての風俗を遊びに還元し、あらゆるファッションを自由自在な、どんな権威や規制や習慣にも捉われないものにしてしまったのは、私はひとつにはツーリズムの影響と、それによる国際交流と、各国間のエキゾティシズムが平均化されたことに関係があると思う。
われわれは、インドのサリーを銀座の街頭で着ている日本女性に会っても、もはや驚かないようになった。
そしてそういう伝統も歴史もないところの、自由自在に採択された風俗が、何ら驚きも与えない時代が来てみると、あらためて服装というものは、ひとつの社会的強制の中のみで意味をもっているということに、気がついてくるのである。
三島由紀夫『若きサムライのために』