当時('66)、毎日数多くの写真を撮り、それなりの手ごたえを感覚しながらも、僕はいつも得体の知れないイライラやモヤモヤを沢山抱え込んでいた。
そうした、写真を撮ることから生じるストレスや、僕の日常生活そのもののなかにひそむ不安感の一切を、この本をつくるにさいして全てぶちこみたいという思いだったはずだ。
写真にテーマなんていらない、写真なんて美しくなくてもいい、僕の眼に写り、身体が感応し、心に突き刺さってくるものはことごとく対象であり等質なのだ、という過剰な気負いの中で一気に編集した覚えがある。
むろんそれは、半ば以上無意識の作業であったと思う。
森山大道『にっぽん劇場写真帖』(写真家)