思いうかべてみろよ、ラグーンを。
背の高い岩壁にぐるりと囲まれ、外海からも、近くを通る船からも遮断された秘密のラグーン。
想像してみろよ。真っ白な砂浜。
一面に広がるサンゴ礁。ダイナマイト漁やトロール網によるダメージなんてどこにも見あたらない。
淡水の滝は島のあちこちに散らばり、熱帯のジャングルがすべてを覆いつくしている。
ぶ厚い緑の天蓋、千年近くも手つかずの植物、極彩色の鳥、木の上で遊ぶ珍種の猿。
まっ白な砂浜の上では、サンゴの庭で魚とりをしながら、選りぬきの旅人たちが小さな共同体を成して暮らしている。
旅人たちは好きなときに島を去り、好きなときにまた戻ってくる。
けれどもビーチは変わらず、そこに存在しつづける。
アレックス・ガーランド『ビーチ』(小説家)