2005年05月12日

ロマネ・コンティ・一九三五年

・開高健 「ロマネ・コンティ・一九三五年 六つの短篇小説」

「ロマネ・コンティ・一九三五年 六つの短篇小説」

「玉、砕ける」、「飽満の種子」、「貝塚をつくる」、「黄昏の力」「渚にて」「ロマネ・コンティ・一九三五年」の六つの物語から成る短篇小説集。昭和53年に集英社より刊行。

開高健の有名な中国の挿話である〝馬馬虎虎(マーマーフーフ)〟も最初の小説に登場。

氏はこの挿話が大変お気に入りのようで、大抵の作品に現われている。きっと読者にも馴染みやすいだろうと思う。

中国語で、黒か白か、右か左か、と尋ねられたときにどっちともおぼつかない答えをして切り抜けたい時、昔の中国人は「マーマーフーフ」と答えたのだって小話。馬とも見えるし虎とも見える、どちらともいえないけれど。先人の知恵である。

今回、この小話が登場するのは香港の九竜半島。半自伝的のような物語が続く。

ベトナム戦争中のサイゴンでの阿片体験。南国の騒音。ムッチリとした熱帯独特の空気が揺れる。

文章にストイックな氏であるからこそ、読みやすく、親しみのある酒場のスツールのような、心地よいレコードのようなそんなストーリーばかり。

ヨーロッパの映画を観るような気分で。

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投稿者 ko : 2005年05月12日 22:17 | トラックバック(0)
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