・スティーブンキング 「幸運の25セント硬貨」
「幸運の25セント硬貨」
『Everything's Eventual: 14 Dark Tales』に収録された14の物語のうち、「なにもかもが究極的」、「L・Tのペットに関する御高説」、「道路ウイルスは北にむかう」、「ゴーサム・カフェで昼食を」、「例のあの感覚、フランス語でしか言えないあの感覚」、「一四〇八号室」、「幸運の25セント硬貨」の7つより邦訳出版された短篇集。題名だけでも恐らく食指を扇情されるのではないだろうか。ましてやスティーブンキングが作者なのだから、それはもう正統的なホラーから、ホロリと涙が流れる傑作まで、ほんと幅広い。それぞれの冒頭にストーリーに対する作者からの言葉も寄せられているのがファンならずとも嬉しいものだ。
スーパーでアルバイトをしている若者が、ひょうんなことから自分のその特殊な能力に気が付き、やがて職業的超能力者として束の間のアメリカンドリームを歩む「なにもかもが究極的」。ペットにまつわる夫婦のイザコザから始まり、急展開をして息を呑む軽快な構成の「L・Tのペットに関する御高説」。気味の悪い絵をフリーウェイの途中の路上マーケットで購入したことから次々と不可思議な事件に巻き込まれる小説家の物語、「道路ウイルスは北にむかう」などなど。
いやあ、キングの小説は短篇も非常に捨てがたいね。むしろ、短篇だからこそ味わえる楽しさがきっとある。