夏の眩しい季節の前触れのように連日と家路に帰らず、あっちで一杯こっちで一杯と酒盃を酌み交わす毎日を過ごしている。
たいがいの銘酒を口にしたし、このほどの焼酎ブームの恩恵もあり、東京でも九州地方の芋焼酎が手ごろに入手できるようになったのも、ひとつの要因であり、言い訳でもある。
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芋焼酎を呑むなら「お湯割り」が一番だと教えてくれたのは、北九州に住む友人で、「6:4」で割るのが一番だと語る。
彼が言うようにお湯で割った焼酎の香りは素晴らしく、湯気となり散りゆく酒精は、芋焼酎の本質を最大に生かした呑みかたであり、急がない酒を味わう気持ちよい時間が過ごせる。
時間に委ねないで、悠々と酒を呑み交わすのは九州の土壌に合っているのかもしれない。
薩摩焼酎の「白波」を彼は〝ホワイトウェイブ〟とあえて横文字読みで注文する。
竹を割ったような九州男児そのものの彼から発せられる突拍子もない言葉遊びと、商品名からのギャップ、非凡なアイデアを僕はすっかり気に入って、このお酒があるたびに「ホワイトウェイブひとつ」なぞ言っては、店員の眼を丸くさせるのを楽しみにしている。
廉価な値段で呑める芋焼酎とくれば「白波」というのも九州じゃ常識ではあるが、それでも東京ではさほど見掛けることはない。
東京では〝珍しい〟だけや〝希少性〟だけで価値が決まることが往々にあるのだから、意外と見落とされているのであろうか。
鼻孔をくすぐる、ふくよかな芋の香りから放たれるまろやかな味わい、きっと一度呑んだらクセになる。
薩摩酒造株式会社
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