・David Tomory 「A Season in Heaven」
「A Season in Heaven」
洋書。翻訳本は現在のところない。97年にカトマンドゥのタメル地区にある古本屋で購入。
60年代、70年代初頭にアジアや中東を旅した欧州、日本、米国の若者の姿を追ったインタビュー形式の回顧録。
当時のヒッピー文化や神秘主義、東洋には十分と若者を惹きつける磁力が備わっていた。
ゴア、バラナシ、カトマンドゥ、カブール。当時の旅人たちは既存の西洋文化を懐疑し、自己を再構築する為にインドを目指し、僅かな所持金で旅をした。
それは今も昔も変わらない。
でも当時にはまだ何かがあった。
それは時代が産み出した世界を包んだ情熱のようなものなのか。
不思議と人はみな「60年代、70年代は特別だった」という。
僕はある一定の期間を切り取って特別な時代なんて位置づけはあるものかと思うけれど、頷くしかないようだ。
やっぱしこの時代に何かがあったみたいだ。この本を読むとそんな気がしてならない。前史的な憧憬にも似ている。
ヨーロッパからテヘランへ向かうというマジックバスがあればそれに乗り込み移動したという。沢木耕太郎の「深夜特急」もこの当時の話だ。
この書籍ではゴアの60年代頃の生活が描かれている。どうして、ゴア州で裸で生活することが禁止となったのか、最初にゴアをユートピアとしたドイツ人はどうしているのか、当時のパーティシーンの情景、まだ茅葺き屋根かコミューンで暮らしていたヒッピー達の生活など。簡単な英語力があれば十分に読むことができるので、興味のある方はぜひ。
最後に一つ。この当時の旅人達の象徴的とも謂える冒頭の台詞をここで紹介。これを読んだらページを綴らずにいられないだろう。
For Lyn, Kevin, and all those who did not return.
(Lyn, Kevin、そして還らなかった全てのみんなに。)