2005年08月02日

スモーク

スモーク【1995年 米】

監督:
ウェイン・ワン(Wayne Wang)
脚本:
ポール・オースター(Paul Auster)
原作:
ポール・オースター(Paul Auster)

キャスト:
オーギー・レン --ハーヴェイ・カイテル(Harvey Keitel)
ポール・ベンジャミン --ウィリアム・ハート(William Hurt)
ラシード --ハロルド・ペリノー・ジュニア(Harold Perrineau Jr.)
サイラス・コール --フォレスト・ウィッテカー(Forest Whitaker)

ポール・オースターの短編物語(どちらかといったらショート・ショートに近いかね)である「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」を映画にしたのがこの「スモーク」。

ブルックリンにある煙草屋のたわいもない毎日の物語を、煙草屋の主人オーギー、妻の事故がキッカケでスランプになった作家ポール、ひょんなことからポールの家に居候してオーギーの店でアルバイトを始めることとなる黒人少年ラシードがそれぞれ物語を展開していく物語。

オーギーは毎日の趣味として煙草屋の前の道を〝決まった時間〟、〝決まった構図〟で写真を撮ることとを趣味としている。

その写真の中に常連であるポールは亡き妻の姿を見つけた…。ポールとオーギーはそれから単なる常連ともいいがたい関係となっていく。

一方、ポールのところで居候していたラシードが突如行方不明になる。2人が探して見つけ出したラシードの新たなアルバイト先は今にも潰れそうな車の修理工場だった。なぜラシードはここで働こうとしたのだろうか。

いろんな物語が詰まっているけれど、息苦しくないし、むしろ季節の変わり目の切ない気持ちになるような珠玉の物語ばかり。

オーギーの煙草屋は雑誌とちょっとした雑貨とスナックと煙草を売るだけの店だけど、いろんな人が集まってそこで会話をしながらテレビを見ながら楽しんでいる。アメリカの抱える問題っていろいろあるだろうし、それは手ごわい、なかなか片付かない側面がある、それでもブルックリンの街角にある人情味溢れるオーギーの店を見ると、やっぱりいいなって思うってしまう。

ハーヴェイ・カイテルの煙草をくゆらせる姿は実に美味しそうだ。煙草を吸えないのが非常に残念なシーンである。思わず吸ってみようかしらって思うぐらいだもの。

喫煙者の皆さんでしたらすかさず手元にあるパッケージに手が伸びちゃうのじゃないかしら。

そして最後のシーンである主題の「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」をオーギーがポールに話すシーンはほんっとクールだ。是非観てほしい。そしてそのクリスマスの夜のオーギーの回想シーンもジーンとくる。

「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」は柴田元幸訳が有名で、この作品は村上春樹訳でも読むことができる。文春新書から出ている「翻訳夜話」で、2人がそれぞれ翻訳して載せているので、原文にご興味がある人は是非。

P・オースターの翻訳者としての柴田元幸の訳はやっぱり秋の初めに羽織る着心地のよいネルシャツのようにしっくりと合う。村上春樹訳もまんざらでもない。もっとも本人が「翻訳夜話」で告白しているように映画「スモーク」を観た後に翻訳しているだけにハーヴェイ・カイテルの姿がどうしてもオーギーに被ってしまう。それはそれで僕は良いと思うけど。

ちなみに「スモーク2」とされる「ブルー・イン・ザ・フェイス」は個人的に超駄作なのでお勧めはしない。

情緒溢れる度★★★★★

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投稿者 ko : 2005年08月02日 19:22 | トラックバック(0)
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