2005年08月03日

エレファント

エレファント【2003年 米】

監督:
ガス・ヴァン・サント(Gus Van Sant)

キャスト:
ジョン --ジョン・ロビンソン(John Robinson)
イーライ --イライアス・マッコネル(Elias McConnell)

マット・ディロン主演、あのウィリアム・バロウズも特別出演している「ドラッグストア・カウボーイ」を送り出したガス・ヴァン・サントが、アメリカのコロラド州コロンバイン高校の銃乱射事件をモチーフに、その日の一日を捉えた映画。

同事件の映画といえばドキュメンタリー映画の「ボーリング・フォー・コロンバイン」が有名だけれど、マイケル・ムーアがアメリカの銃社会に対して正面から疑問を投げかけて、観る者に訴えかけているとしたら、ガス・ヴァン・サントはアメリカがいま抱えている底知れぬ強大な恐怖や、人々が潜在的に抱えている暴力性の不条理をこの事件を通じて伝えようとしているのではないだろうか。

いつもとかわらない、どこにでもある毎日と同じ一日であったはずのコロンバイン高校。

犯人の少年2人を含めて何人かの生徒達をカメラワークで追いながら、同じ時間のシーンを、違う生徒の視点よりそれぞれ映画の中に執拗に散らばめることで、その日の学校で何が起きたのか観客自身も知ることとなり、いつのまにかその生徒と同じ視点で学校に存在している気がする。

この映画に、何故この事件が起きたのかというメッセージは無い。

でもどんな日に起きたのかは僕らは知ることができる。それは本当に〝普通の一日〟に起きたのだ。我々が朝起きて、朝食を食べて、学校か会社に向かう一日と同じように。

僕らはこの事件の〝結末〟を既に知っている。

彼らが狂気の果てにどんな行動に出るのか、学校で何が起きるのか、そして、その悲劇的なラストがどのように迎えられるのか、避けられない未来を待っている自分に気付かされる。

やはり傍観者なのか。

それだけに生徒たちの姿が余計に辛い。

ポートレイトを撮り続ける写真部のイーライの廊下を歩くシーンに、ガス・ヴァン・サントらしさが滲み出ていると思う。

ゆっくりとしたカメラワークと音が練られるようにシュワシュワと耳に届くような届かないような場面。

全体的に色の少ない映画のなかで、、ジョンの透き通るような金髪とそして彼の着ている黄色のTシャツが、この物語の冷たさと救いが求められない苛立ちを表現しているのではないだろうか。

切ない度★★★★★

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投稿者 ko : 2005年08月03日 19:06 | トラックバック(0)
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