ザ・ビーチ【1999年 アメリカ】
監督:
ダニー・ボイル(Danny Boyle)
原作:
アレックス・ガーランド(Alex Garland)
キャスト:
リチャード --レオナルド・ディカプリオ(Leonardo DiCaprio)
ダフィ --ロバート・カーライル(Robert Carlyle)
フランソワーズ --ヴィルジニー・ルドワイヤン(Virginie Ledoyen)
エティエンヌ --ギョーム・カネ(Guillaume Canet)
サル --ティルダ・スウィントン(Tilda Swinton)
「トレインスポッティング」で一気に知名度を上げたダニー・ボイルがアレックス・ガーランドの同名の小説を映画化。
アジアを旅するバックパッカー達は、こんな噂を耳にした。タイの何処かの秘島で選りすぐりのバックパッカー達が楽園のような生活をしていると。
それはやがて都市伝説に近い幻の島のような存在になる。
リチャードは初めて訪れたバンコックのカオサンロードの安宿で、酷く泥酔している隣の部屋の男が叫んでいるのを突然と耳にする、「ファッキン、ビッチ」。
次の朝、リチャードが朝食から戻ると、一枚の地図が扉に挟んであった。楽園までの地図。隣の男は、死んでいる。
そうか、「ビッチ」ではなく「ファッキン ビーチ」…。
いったい何が起きたのだろう、キケンな香りが漂う。でも、実際の旅の生活はどうだ?トレッキング、安宿旅行、川くだり、どれもこれも冒険からは程遠い、誰もがもうすでに開拓した道じゃないか。もっと刺激を求めて・・。なら行ってみよう。そうして同じく宿に泊まっていたフランス人カップルとともに幻の島へと向かう。
そしてそこに見た世界は本当に楽園だったのだが…。
原作が飛びぬけていると往々にして非難を浴びやすい映画というのがある。
ましてやその映画の主人公がハリウッド俳優が演じたらもう格好の餌食だ。
この映画がそう。この映画の批評をするのは簡単だけれど、20代のうちに〝かけがえの無い旅の日々〟をして、いまは現実社会で生活している人の心の琴線に触れた映画は他には僕は知らない。
そういった意味でこの映画は元旅人達のノスタルジックな感傷に浸ることのできる存在なのだ。
カオサンのD&Dホテルがちらりと見えているだけでグっとくるし、リチャードとフランソワーズが島のビーチに野宿しながら焚き火を焚いて満天の星を眺めるシーンもそうだし、秘島に到着した晩の、たくさんの旅人達が焚き火を囲みながら歓迎の気球を空高く舞い上げるシーンもそうだ。
もし貴方がふとした瞬間にアジアの空を想い出したり、胸が切なくなる時間があるようだったら、この映画を観るといい。きっとこの映画は貴方のその何かの部分を癒してくれる。そういう映画である。
特別バージョンのもう一つのラストシーンも非常に良い。旅の本質を捉えている。本ラストもね。社会復帰して、その現実の象徴であるような電子メール(まさにビーチにはないものだ)に届いた一通の添付ファイル。過ぎ去った日々の一枚。胸にくるよね。
アレックス・ガーランドの原作も秀逸だ。映画では描ききられていないダフィとリチャードの狂った会話や、ライス・ランも詳しく描かれている。
サル役のティルダ・スウィントンは「コンスタンティン」の天使ガブリエル役。飄々とした演技が特徴。
バックパッカー胸キュン度★★★★★