2005年10月25日

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

・フィリップ・k・ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」

「アンドロイドは電気羊の夢を見るか? 」

フィリップ・k・ディックが一気にメディアに注目されるようになったキッカケの作品がこの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか? 」。

原題は「Do androids dream of electric sheep?」、ハリソン・フォードの演技でも有名になった映画「ブレードランナー」の原作でもある。

フィリップ・k・ディックの作品の中でも、とりわけ難解さが低いせいかメジャー感もあり、それだけで代表作として位置づけられてはいる。この点については賛意両論がいまもなお続いているけれど。

さて、フィリップ・k・ディックの作品というのは、村上春樹がどこかのエッセイに載せていたように、神経がある種のくたびれ方をしている時に読むと浸透するとかってあったけれど、実際にその通りだろう。

良くも悪くもフィリップ・k・ディックを読みたい時期というのがあるのは否めない事実で、これは肝心なことだけれども、そういう時に読む〝フィリップ・k・ディック〟というのは、なにものにも変えられないものだ。

ある種の波長と波長が引き合うように、そうやって僕らはまるで砂糖水に吸い寄せられる蜜蜂みたいに、あるいは闇の中で照らされるランタンの灯りに飛び込む夜行性の蛾の如く彼の残していった作品を貪ることとなる。

彼自身は「ブレードランナー」の公開年である1982年に53歳という若さで亡くなってしまった。だから僕らが読んでいるのは総て彼が残した遺作だ。


さて、本編は、第三次世界大戦後の放射能に汚染されて、廃墟と化した地球の物語。

多くの人間は火星に移住して、火星でアンドロイドを従えて余儀のない人生を送っている。

地球に残った人間は、いまだに地球を離れることに抵抗のある者か〝マル特〟と呼ばれる火星移住の基準に満たない者たち。

放射能の影響で数多くの動物が絶滅した今となっては、人々の憧れは、「どれだけ大きな動物を飼うことか」というもの。もちろん馬や羊という希少動物はそれだけ値が張る。

ホンモノの飼えない者たちは仕方無しに模造品である精巧なロボットを、〝まるでホンモノのように〟飼うことにしている、そんな時代。

やがて地球では、火星から新型のアンドロイドが人間を殺したのちに逃亡して地球に忍び込んでいるという情報が入る。

賞金かせぎ(バウンティハンター)であるリック・デッカードはそのアンドロイドの行方を追う。電池が壊れて一晩中メェメェと鳴き続けることのない本物の動物を飼う為に。

逃亡した8人のアンドロイドを追うリックであったが一足先にアンドロイド達はイシドアというマル特と接触していた。

マル特とはいえ、イシドアとアンドロイドの間に横たわる徹底的な差とは・・・。

*
*

ところで、個人的な話で、かつ、ついつい昔話になるのだけれど、僕がこの作品を手にしたのは、10年以上前のアジアの空にあるネパールの古本屋でのことで、ポカラのレイクサイドにその店はあった。

レンタサイクル屋の少し先で、モモ(チベタンやネパリが食べる餃子)レストランの手前にあったと記憶している。

僕はインドでの遊び方が少々派手であったらしく、まともに歩くことが難しい日があったほどの、歯止めの効かない状態だったので、まさにフィリップ・k・ディックの作品に没入する環境がばっちし整のっていた。

しかも日本語媒体の情報量が圧倒的に少ない地域に長いこと居ただけに、文中の1行1行が肌に染み込むように浸透していった。だから今もなおこの作品を読むとヒマラヤ山脈と澄み切った蒼い空の情景が目に浮かぶ。

ボロボロの背表紙の「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」は黴臭くて所々にシミまで附いていた。でも僕は何処に行くにもチベタンの手作りのズタ袋にこの本を入れて、ヒマさえあれば読んでいた。

何故だかは分からないけれど。

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投稿者 ko : 2005年10月25日 16:17 | トラックバック(0)
コメント

いいよね、アンドロイド。ミセスロイドもね。

これのデッカードの奥さんが「隣のうちは本物のヒツジ(だっけ?)飼ってるのよね」
とか愚痴るくだりがなんか好きだったよ。

映画もいいけど原作も素晴らしすぎるよねー

Posted by: TK at 2005年10月25日 21:40

なんつったって「21エモン」のシリアス版だからね。アンドロイドはもちろんゴンスケ。って、ゴンスケってもともとは芋掘りロボットなのにやっぱこの作品は原作っすね。深みがある。

今度、ぜひお勧めのSF作品紹介してくださいな。読みたいです。

Posted by: ko at 2005年10月26日 09:45
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