東日本と西日本で、コレが違うアレが違うと色々と考えたら枚挙にいとまがなく、オチオチと数えられないけれど、とりわけ食文化でその違いはよく目立った。
蕎麦と云ったら、なんといってもやはり東日本に敵わないなと鼻を高くしたけれど、西日本のうどんの美味さには思わず言葉を飲み込んだぐらいだった。
街角にあるチェーン店ですらその美味さを実感したのだから、ちょっと暖簾のある店をくぐろうものならそれはもう桃源郷のような世界である。
西日本で一度でもうどんを食べてしまうと、どれだけ味に鈍い人間でも東日本のうどんは食べられない。それくらいの徹底的で歴然とした差はあった。
さて、そんな風にお国自慢が吹いたり吹かなかったりする食生活で、東日本にあって西日本にないモノを挙げるとしたら、餃子屋のラー油と酢のセットで、逆に西日本にあって東日本にないとしたら、餃子のタレではあるまいか。
前者は東の餃子屋であれば、もう当たり前のようにデコラ調のテーブルに鎮座しているものであり、それはなんと言っても、それぞれの好みと裁量で調合されるべき調味料なのである。
逆に西では、餃子といえばそのテーブルに置いてあるのは餃子のタレであって、あらかじめ調合されている液体、そんな風に個人的には捉えている。
ただ、このタレというのは手抜きでもなんでもなく、福岡でよく見かける鉄鍋餃子とじつに相性が良いのも事実だ。
薄くパリッと揚がった餃子に合うタレとして必然的に発展を遂げたので在るまいか。
東日本にあるようなモッチリとした皮の餃子には、やっぱしラー油と酢と醤油を混ぜ合わせたタレが合うのだろう。
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鹿児島本線の黒崎駅から徒歩数分にある餃子屋「いずみ」は連日盛況している人気の餃子屋だ。
カウンターだけの店は常にびっしりとお客さんが隙間なく座ってて、店内では鉄鍋でモクモクと餃子を焼き揚げている。
俗に言う一口餃子はアッサリとして幾らでも食べられる。サッパリしているけれどそれだけじゃない。餃子のタレと相性がよい小ぶりの餃子は、次から次へとどんどん食べることができる。
メニューにある糠漬けもよく漬けてあって美味しい。持ち帰りにすると500円程度でたっぷりとあるので、家で焼酎のツマミにするのもちょうどいい。並ぶだけの価値がある。
東京23区の一つ、大田区蒲田にある「ニーハオ」は、元祖〝羽根付餃子〟ということでこちらも連日盛況している。
モッチリとしているのにパリっと焼きあがる羽のついた餃子はジューシーで肉汁たっぷりである。
ラー油と酢と醤油を混ぜて豆板醤をたっぷり附けて食べると思わずご飯を頬張りたくなる味だ。
東か西、いずれかで。