カオサンロードにはバックパッカー達ご用達の有名無名の屋台や格安レストランがゴロゴロしていて、そのうちの何店かはカオサンの顔ともいえる名店である。
その通りの端にあるセブンイレブンの前に、夜中から朝方だけにかけて営業する粥屋があって、この店の粥は絶品だった。
サラサラしたスープの雑炊(タイ語でカオトン)ではなく、ねっとりとトロトロに煮込んで米がとろけているお粥の屋台だ。
お粥はタイ語でジョークとたしか発音する。
カオサンに潜んでいる貧乏なバックパッカーは勿論のこと、タイ人もオート三輪タクシー(トゥクトゥク)に乗って、わざわざ訪れるほどの好評ぶりであった。
よく煮込んである薫り高いタイ米に、コクのある味付けがしてあり、刻んだ葱や生姜、香菜が浮かんでいて、卵が落としてある。
すっと蓮華を入れると、豚の臓物や鶏の臓物が匙の先にあたり、思わず顔がほころぶ。
そして、臓物と刻んだ生姜の相性が絶妙で、噛むと滋味と青臭さが拡がる。
なかなか他では食べられない味だ。
1杯20B(60円)。
亜熱帯の常夏の国でじっとりと汗をかきつつ深夜に食べるお粥というのは、意外と懐かしい味であり、ナイトライフをエンジョイした帰りに啜る一杯は、胃に優しい、故郷の味に近いものがあった。
特にRCAやスクンビットで踊って呑んだ、アルコールが抜けるか抜けないかの状態で食べるのが、なんと言ってもナンバーワンで、僕らも例外ではなく、バンコックで遊んだ毎夜、ゲストハウスがランブトリーstにあるにも関わらず、わざわざ手前のセブンイレブンでトゥクトゥクから降りて、この粥屋を目指したものだった。
あの店は、まだあるのだろうか。
半袖と短パンにボロボロのゴム草履をひっさげ彷徨う深夜のバックパッカーを迎えて、温かい粥の一杯を提供していて欲しいものである。