新宿の歌舞伎町にあるコマ劇場を抜けて大久保方面に向かう途中、風林会館あたりは実に怪しげなネオンと看板で埋め尽くされていて、そのいかがわしさとドギツイ香水やら罵声やらで思わず血が騒ぐことになる。
入会金無料1時間800円というテレクラの呼び声、抜け目の無いキャッチの勧誘、堂々と〝バイアグラあります〟と掲げられた電光掲示板と、日本最大のホストクラブの看板。
その通りを風林会館の方向に向けて数分歩くと、左側に香港の貧民窟と間違うぐらいの暗くてジメジメした細い路地があり、独特の香菜の匂いに混じって、怒鳴り散らす中国語が聴こえてくる。「上海小吃」だ。
この店に辿りつく道すじと店の在り処だけで、1つの映画や小説が作れそうな雰囲気である。
夕方18時からの営業で早くも在歌舞伎町や出勤前の夜の連中で埋め尽くされる人気店。
カエルやウサギといった食材がごく普通に置いてある中華料理の店でもある。
こちらはウサギの炒め物(1200円)。
小骨がたくさんあるわりとアッサリしたウサギは、どこの肉の部分か想像できないほど、味付けがしてあって、煮込んだり炒めたりしてある。
小骨を上手く避けながら肉にかぶりつくと鶏肉のような味がする。八角の香りがプンプンと漂う一品。
カエルの唐揚げ(1800円)。
カエルの唐揚も少し小骨があるけれど、やはり鶏肉のような味がする。
沼や河原の生物と想像できないくらい上品な味。シンプルに塩胡椒で食べるのが宜しい。
空心菜の炒め物(1000円)。
定番中の定番料理の空心菜の炒め物。 ニンニクを散らし強火で炒めた空心菜。牡蠣油がジュッと染み込んでいて鷹の爪がアクセントとなる。シャッキリな茎の部分とシナシナの葉っぱの部分が絶妙のハーモニー。
豆腐のサラダ。
細切り豆腐の塩味。モニョモニョの不思議な食感と単純だけれど奥深い塩味コンビネーション。中華料理の懐の凄さをまじまじと感じる一品。
冬瓜スープ(1200円)。
鶏がらベースの冬瓜スープは芯から身体が温まる。
冬瓜のみずみずしい南国のフルーツのような食感を堪能しつつ、コクのあるスープを啜る。
思わず言葉を失うほど。
上海風揚げもち(600円)。
春雨と同じ材料のモチモチしたデザート。
黄金色の揚げもちは、甘いこってりとしたフレンチトーストに近い柔らかい味で、どこか西洋の雰囲気もある。
明け方に近づくほど(なにせ朝の5時まで営業!)、ここが何処だかわからない顔ぶれがテーブルに揃うという。ディープな新宿を堪能したい人は終電が無くなった時間以降に行くと面白いかも。
上海小吃(シャンハイシャオツゥー)
新宿区歌舞伎町1-3-10
平日18:00~5:00
日・祝日18:00~2:00
─HP─