・三好銀 「三好さんとこの日曜日」
「三好さんとこの日曜日」
90年代初頭にスピリッツに掲載されていた三好銀の初の単行本。梅という名の猫を飼う夫婦の、何処かにありそうなやさしい淡々とした日曜日の様子を描いた名作。
寡作で有名なこの著者の描く漫画は、シンとした不思議なノスタルジック漂う静謐な心地よさがある。
夜、寝静まった時刻に遠くから聞こえる汽笛の音に耳を澄ますときの気持ち。
作者の住んでいたエリアが西荻窪-吉祥寺あたりだったので、中央線的な生活(そんなのがあるようで、ないようで、やっぱりある)が、懐かしいデジャブのように書き出されていて、読み終えると温かい気持ちになる。
誰かに何かを伝えたいような、誰かとなんとなくお散歩したいような素晴らしい名作だ。
登場の梅ちゃんがかわいすぎるので、猫好きにお奨め。一作品がだいたい2ページ程度。
たとえ明日が月曜日でもこんな日曜日が好きだなという台詞が本作品にあるけれど、まさにその通り。
こんな日曜日があったらいいな。
淡々として、それでいてささやかな日々の生活であり、小さな幸せであるような日曜日。
すでに絶版であるのが悲しい。スピリッツ掲載分で、単行本未収録の作品が幾つかあるはず。部数は伸びなかったかもしれないけれど、珠玉の名作はあるのだから。再販と未収録作品の単行本化を強く望む。
─amazon─