2005年12月20日

バリリズムクリスマス

ご存知・・・、かどうかは知らないが、バリ島はバリヒンドゥーと言って、インドネシアに伝播したヒンドゥー教が独特に発展した島独自の宗教があり、その宗教の中で規律とモットーを重んじて人々は生活している。

実際にインドにおける不可触賎民(ハリジャン)の位置を示す身分制度は無いにせよ、緩やかにカースト制度が存在する島だ。

たしかプダンダと呼ばれる祭司がいて、多くの庶民はシュードラというカーストであったと記憶している。

そして、庶民の生活の実にさまざまな到る所に、このバリヒンドゥー的な宗教習慣が実際に見られる。

ウブドゥはもとより、クタビーチやスミニャックのどんなサイケデリックな店ですらも、朝になれば必ず店の入り口に葉っぱで包まれた花の乗ったお供え物が置いてあるし、山の方では獅子舞とルーツが同じであろう被り物をした動物が練り歩いている。この島を訪れる多くの旅人がまずは驚く事実だ。

日本の、とりわけ東京のクリスマスは、シュプレヒコールの如くクリスマスソングが鳴り響くので、否応がなしに12月24日がクリスマスであると強制的自覚を強いられ、豪華絢爛な装飾のデパートとその徹底としたシーズンイベントに、日本人はキリスト教を信じるのか?と、外国人に錯覚させるほどの勢いがあるという。

しかも、その数日後には神社にお参りをするものだから、更なるその豹変振りに、外国人がケムに巻かれるのは有名すぎる話だ。日本の特徴的な嗜好の一面である。

これがバリ島となると、まるで逆の立場に追いやられ、自分が否応ナシにキリスト教圏外に、今居るのだ、と気付かされるわけである。

でもこれはもっともな話で、国民的に無宗教感が蔓延する日本だからこそ、クリスマスをひとつの年行事として成立させてしまう傾向がある、

つまり日本人にとっては、7月7日の七夕も12月24日のクリスマスイブも同列なのである。どちらも年行事として捉えて、同じ性質で、或る意味、宗教が立ち入る隙がない。

だから、少なくとも信仰心からしてみれば、バリ島の感覚のほうが正しいと言わざるを得ない。

さてバリに腰を据えて旅をしていた頃、ビーチで日焼けして、夕方までロスメン(バリの安宿)でナシゴレン(インドネシアの焼き飯)やサテー(焼き鳥)を頬張り、ビンタンビアやバリハイを呑んでは寝るという自堕落な生活をしていた。

そんな日々でも、朝食の時間だけは毎日ちゃんと起床して食べるように心がけていた。

心がけていたといっても朝の10時に起床するのすら、呪詛を呟くほどだったから大した早起きじゃないんだけれど、どうしてそこまでして早く起きるのかというと、バリ島のロスメンはアジアの他の国々のゲストハウスと違って、朝食が出るのである。

これは節約生活をするバックパッカーにはありがたいことだ。

だいたいがフルーツとパンと卵とバリコーヒー、コーヒーの粉がたっぷりと沈んだバリコピである。

網を編んだテーブルに置かれた朝食を、バリニーズのふくよかな微笑に囲まれて食べる。

木陰の竹製のしっくりとしたテーブルで、軽くシャワーを浴びた後に食べる朝食は格別だ。

12月24日、その日も例外ではなく、いつも座る少し段を登ったプールのよく見えるテラスで新聞を読みつつ、朝食を食べていた。

何気なく目にやった英字新聞のその日付で、僕らはようやくその日がクリスマスイブだってことを知った。

半袖と短パンで迎えるクリスマスはまるで実感が湧かなかった。

特にクリスマスソングが流れるわけでもないし、もみの木があるわけでもないし(椰子の木ならあるけれど)、街のどこもが昨日と同じであった。

新聞さえ読まなければきっと永遠に気が付かなかったに違いない。

「やれやれ、今日はクリスマスだぜ」僕と僕の友人は揃って言うと、わけもなくテラスでゲラゲラ笑ってしまった。

今日がクリスマス!そう思うだけで笑いが吹き出た。

それはとてつもなく僕らにもバリ島にも関係ない行事に思えたのだ。

僕らの周りにあるのはキラキラと水面が輝くプールとお香の漂うテラスと、コパトーンのサンオイルの甘い香りにビーチサンダルだった。

僕らがあまりにも大笑いしているので、ロスメンのスタッフが、おいおい、一体どうしたんだと様子を見にきた。

目に涙を浮かべてヒィーヒィーと呼吸をする僕らは何とか笑いを堪えて、「メリークリスマス!」と大きな声で言った。

突然なにを言っているんだ?、こいつらは、と言うかのようにキョトンとした顔つきでスタッフが首を傾げていた。

こんなクリスマスもたまには。

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投稿者 ko : 2005年12月20日 19:19 | トラックバック(0)
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