2006年02月22日

さくらの唄

・安達哲「さくらの唄」

安達哲について語るならば、安達哲ほど、青春漫画のドロドロとした陰鬱的な部分と、泣きたくもなる不変的な淡い思い出を、両サイドから描ける作家はいない。

少年マガジンで連載した「ホワイトアルバム」「キラキラ」で、若者と大人の狭間に生きる切ない高校生の群像を描いて多くの読者をつかんだ。

両作品は、画風こそ80年代後半~90年代初頭の漫画なので、今にしてみれば多少なり古臭いかもしれないけれど、その世界に描かれているのは、つまり、僕らみんなが通過したある時代のある気持ちなのだ。

誰もが抱えている淡い思い出、それがこの2作品は描かれている。

その後、安達哲は少年マガジンからヤングマガジンに活躍の場を移して、衝撃的話題作「さくらの唄」を連載した。

普通の高校生だった市ノ瀬が送ることとなる、まるで普通じゃない生活。

叔父夫婦が市ノ瀬の家に住むことから姉や担任の美人教師を巻き込んで、どんどんと深みに嵌っていく。

単行本の第3巻は大胆な性描写があることから成人指定を受けたことで話題を呼んだ。

鬱屈で不安定な10代の、突き刺さる焦燥を突き詰めている。市ノ瀬が抱えている内面的葛藤は特別なのかもしれないけれど、特別じゃないかもしれない。

僕らはそんな市ノ瀬にシンパシーを感じるだろう。

R指定を受けたことから、どうしてもエロな部分に集中されてしまうが、この作品の楽しくて恐ろしいところは、別のところにある。

残念ながら、それは読まないと分からないはずだ。

「俺(私)って、よく変わってるって言われるんだよねぇ」っていう連中はこれを読んで目を覚まそう。

普通じゃないというのは、これだけ現実と乖離して、孤独で、本人が求める求めないに関わらず引き寄せてしまい、カルマのように付き合わなくてはいけないのだということを知るのにちょうどいい。

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投稿者 ko : 2006年02月22日 19:19 | トラックバック(0)
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