キャスト・アウェイ【2000年 アメリカ】
監督:
ロバート・ゼメキス(Robert Zemeckis)
キャスト:
チャック --トム・ハンクス(Tom Hanks)
ケリー --ヘレン・ハント(Helen Hunt)
スタン --ニック・サーシー(Nick Searcy)
例えば、何か僕達の想像を超えた思いがけもしないアクシデントで自分の行方が分からなくなってしまうとする。いつもと同じ朝の平和な一日に勃発する不協和的な事件。それは突然の事故かもしれないし、たんなる記憶喪失で我を失うことなのかもしれない。
でもとにかく僕の行方は突然と分からなくなるのだ。
僕は玄関を開けて「それじゃ行ってくるからね」と言い、「何時に帰ってくるの?」と僕は訊ねられる。
「そうだなあ。いつもとおんなじくらいだよ」とやはり僕はいつもと同じように答えて扉を閉める。
トム・ハンクスの「キャスト・アウェイ」は、普段と変わらない日常が一変し、運命に翻弄されることとなるエリートサラリーマンの物語だ。
主人公のチャックは1分1秒を刻々と争う世界的運送メーカーFedexの仕事熱心な社員。
「時間を無駄にすることは罪なことである」という彼の人生を形成する理念に主人公は没頭し、荷物を効率的に1秒の無駄もなく届けることに情熱を燃やす。ある晩、何の疑問もなく甘い日々をすごしていた愛する彼女にいつものように別れを告げ、貨物便の飛行機に同乗するのだが、その便は途中で遭難し、トム・ハンクス演じるチャックはただ一人の生存者として無人島に漂着する。
時間に追われることのない孤独な無人島に放り出されたチャックが、島を脱出するのに必要とする歳月は4年間だった。
彼はそれだけの時間を孤独に過ごし、耐え、ついにカムバックする。
しかし、かつての恋人ケリーはチャックがもう死んだと思い、他の男性を愛し結婚をしていた・・・。
別れの予感すらなかった幸せの絶頂期だった恋人との突然の惜別。
この映画の醍醐味は、主人公チャックが無人島に流されて、彼の中で現実的な時間が喪失している状況にも関わらずなんとか脱出し、彼女にもう一度会いに行くところにある。
他の人生を歩むことを決心してしまった彼女をチャックは知らない。
恋人に再会できると信じて4年間の孤島生活に耐えたチャックは、もう一度ケリーに会うべきだったのか?
もう死んでしまったと信じるしかなかった彼との、あるはずのない、起きてはいけない再会。
それはあまりにも切ないシーンだ。
すでに新しい家族と過ごすケリーの自宅前に駐車した車の中で、束の間に抱き合う2人に運命の不可思議と非情を感じる。
不条理度★★★★★