・渡辺克巳「新宿 1965‐97」
平成18年1月29日に64歳で逝去した写真家の渡辺克巳が撮りつづけた街、新宿の歌舞伎町。
娼婦、ヤクザ、オカマ、ヌード嬢、ゲイボーイ、暴走族。行くあてもなく、新宿のネオンに停滞しつづけざるをえない、そんな歌舞伎町という街の顔を撮っているかのように思える。
新宿西口がまだ荒涼とした原っぱみたいな70年代、まるで蟲のように新宿の街に潜んでいるベルボトムを履いたフーテン。
上半身裸のアパッチ族のヒッピー。
屈託のない笑顔のヌード嬢。
森山大道の写真より冷たくなくて、荒木経惟より熱くない。
でもたしかに写真でしか捉えることの出来ない何かをフレームに収めている。
それが渡辺克巳の写真だ。
徹底的にモノクロにこだわり、新宿にこだわった男のエッセンスがここにある。
実は僕も中2の時に何度か渡辺克巳を見掛けた事がある。
新宿のゲームセンターでクラスメイトとコインゲーム荒らしをして遊んでいた頃、歌舞伎町の入り口にあるラス***スというゲーセンを過ぎたあたりでよく見かけた。
ある特殊な方法でコインゲームのコインを増やし続けていた僕らは、新宿中のゲームセンターで目をつけられるようになって、だんだんと遊ぶ場所がなくなりかけていた。
ラス***スは、ちょっと間の抜けた感じのゲーセンだったので、やがてはそこを拠点にして遊んでいたんだけど、その当時の夕暮れになるとよくコマ劇場のあたりで渡辺克巳がまるで新宿全体を吸い込むような顔ぶりで立っていたのを見掛けたものだ。
本書はすでに絶版。定価(\4300)の倍近くで取引されている。ごく稀に定価のまんまで書店に埋もれていることも。