・東海林さだお「キャベツの丸かじり」
多くの海外に住む、あるいは長期旅行中の日本人が一番読んではいけない本は、ロシア語通訳者として名高い米原万里氏が言うように、東海林さだおの「丸かじり」シリーズに他ならないだろう。
緻密すぎる日本食の描写、文章の一段落(いや、下手したら一文字)ごとに胃袋に伝わる徹底的な美味表現。
日本食を食べていない時期にうっかり読んでしまうと思わず「ウギャア」と叫ぶ羽目になる。
もしくは熾烈な焼けるくらいのホームシックに丸々1日は付き合わされることになるはずだ。
そして僕は00年1月にバリのウブドゥにある古本屋で、まさに〝うっかりと〟この本を手にしてしまって、亜熱帯植物が庭いっぱいに溢れるテラスで言葉通り「ウギャア」と叫ぶこととなった。
丸かじりシリーズ第二弾「キャベツの丸かじり」。
お正月のおせち料理に飽きた時に食べる油滴の浮いた醤油ラーメンの旨さ、懐かしいのり弁の美味しさ(海苔が浸み込んでシンナリするぐらいが食べごろなんてまで書いてある)、アツアツごはんに一番合うおかずといえば生卵ご飯(タラコもいいだなんてまで書いてある)、カツ丼の魅力、学校が終わって帰宅してランドセルを背負ったまま、お玉で漉くって飲む冷たいキャベツの味噌汁の美味しさが文庫本に痛快に書いてある。
たしかにバリ島のインドネシア料理も美味しい。目玉焼きの乗ったインドネシア焼き飯ナシゴレン、串焼きのサテ、えびせんのディップは毎日食べられるシロモノだ。
でもね、一度でも油滴の浮いた醤油スープに縁取られたチャーシュと縮れた麺、アツアツご飯に生卵と想像してしまったら、お腹がグウグウと鳴り、目の前に並ぶパンやインディカ米のピラフが憎たらしくなってしまうのだ。
俺がいま食べたいのは、ラーメンと生卵ご飯とタラコなんだ!と、誰に向かってか、叶えられもしない夢を叫ぶのが事の顛末。
どれだけ国際化が進もうとしても食事に関してはダブルスタンダードは導入できないな。
もちろん全然拘らない人もいて、そういう人は何食べてもやっていけるわけだから羨ましくてしょうがない。
でもやっぱ僕はね・・・。
丸かじりシリーズ全部持ってるお!
おっ。さすがです、おにくさん。
このシリーズ、いいっすよね。着眼点とか笑えて。
そして、どれもこれも旨そうなのよね、なんだか。
俺もコンプリートしようかな。