ふくろうの河【1961年 フランス】
監督:
ロベール・アンリコ(Robert Enrico)
原作:
アンブローズ・ビアス(Ambrose Bierce)
キャスト:
農場主 --ロジェ・ジャッケ(Roger Jacquet)
南北戦争のさなか、軍列車を妨害したとして、アラバマの農場主が桟橋で絞首刑に遭う。穏やかな日光が濯がれるある昼下がり、桟橋に吊り下げられた縄ひもで、ついに彼の処刑が始まる。
足元には河が流れ、河の周りには長身銃を持った兵士が取り囲む。絶体絶命のなかで、彼は絞首刑に遭うものの、難なく生き長らえる。次々と襲う兵士の手を逃れ妻に会いに行った瞬間、彼が見たものは・・・。
原作がA・ビアスという時点でピンと来た人はさすが。
「悪魔の辞典」の著者であり、芥川龍之介の作品に多大な影響を与えたアメリカの作家だ。
「悪魔の辞典」が最も有名だけれども、実は怪奇小説を数多く手がけていて、「ビアス短篇集」として岩波文庫から発売されているほどだ。
この短篇集に収録されている「アウル・クリーク鉄橋での出来事」の映画化がこの「ふくろうの河」。
モノクロームで統一された映像は不気味なぐらいに落ち着いていて、その中に狂気が含まれている。
ロベール・アンリコの映像は、とにかく緊張感が漂う。
映画のようであり、同時に映画の物語そのものから乖離している作品。
このアラバマの農場主と同じ体験は無理だ。
それでも観る者はA・ビアスが表現しようとした〝生と死のはざまの非情〟に、きっと『嗚呼・・・』と呟くに違いない。
ある意味、現実的な映画で恐ろしくなる。
映画を観た直後に恐怖を感じるのではなく、何かのふとした瞬間に、農場主が体験した〝死の恐怖〟が浮上してきて、僕を襲う。そんな後味を持ち合わせた映画を、この作品以外に僕はまだ知らない。
恐怖後味度★★★★★