マルコヴィッチの穴【1999年 アメリカ】
監督:
スパイク・ジョーンズ(Spike Jonze)
脚本:
チャーリー・カウフマン(Charlie Kaufman)
キャスト:
クレイグ --ジョン・キューザック(John Cusack)
ロッティ --キャメロン・ディアス(Cameron Diaz)
マキシン --キャサリン・キーナー(Catherine Keener)
レスター博士 --オーソン・ビーン(Orson Bean)
ジョン・マルコヴィッチ --ジョン・マルコヴィッチ(John Malkovich)
カメオ出演:
ショーン・ペーン(SeanPenn)
ブラッド・ピット(Brad Pitt)
ウィノナ・ライダー(Winona Ryder)
人形遣いのクレイグは、腕は確かなのだが、お客の心を掴めない劇ばかりを上演して、不遇な日々を過ごしている。そんなこんなで、妻のロッティの困惑もあり、就職活動を始める。
そこで彼は、手先が細やかな人を募集しているというファイル整理係の求人を発見し、7階と8階の間にある、7と1/2階の奇妙なフロアで仕事を始める。
そして、妻がいながらも同じフロアの別会社に勤めるマキシンに次第に心を奪われるクレイグ。
そんなある日、1枚のファイルを落としたクレイグは書庫を移動させる。
そこにはなぜか木製の扉があった。木製の古めかしい謎の扉。
恐る恐るその扉の向こうにある穴に進むと、なんとそれは俳優ジョン・マルコヴィッチに繋がっている穴だった。マルコヴィッチの中に侵入できる穴なのだ。
15分間だけマルコヴィッチになれるその穴を早速と商売にしてしまうクレイグとマキシン。やがてその穴がマルコヴィッチ本人に見つかり、マルコヴィッチ自身に繋がっている穴に本人が入ることに・・・。
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ビースティ・ボーイズの“サボタージュ”のミュージック・クリップを手がけ、MTVやCMの映像業界で常に話題を振りまいていた スパイク・ジョーンズ初監督作品。
まるでカフカの「変身」のごときの世界。ある朝、蟲になっているわけじゃない。ある穴を通じると15分間だけジョン・マルコヴィッチになっているのだ。
まず最初に思ったのは「よくこんな話を思いついて、そして映画にしたな」という点。
中途半端に科学を振りかざしたり、コンピューターやハイテクを映画に散りばめると、現実との齟齬が起きて、「あそこのシーンは矛盾している」とか「科学的見地からしておかしい」と、多くのSF映画は非難を浴びるわけだけれども、この「マルコヴィッチの穴」は、そんな非難なんかを受け付けない強力な圧倒感を持っている。
どれだけ科学が発展しようとも、この映画の世界観に近づくことはきっとないはず。
なぜならオフィス街にあるビルのフロアの壁についている穴が、俳優の脳みそに繋がっていてる「マルコヴィッチの穴」は絶対に〝超ありえねぇー〟映画だから。
ギャグ映画で終わると思いきや、人間臭くエゴイスト丸出しの人形遣いクレイグが絡むことで、ブラックなドロドロした映画に仕立て上げられているのが秀逸。
終わりまで目を離すことができない展開。
そして、クレイグの妻ロッティ演じるキャメロン・ディアスは、不細工すぎて本人かどうかなかなか気が付かないぐらいの演技を披露。男から見てダメで洗脳されやすいナチュラル厄介女っぷりだ。
でもやっぱり、最もウケるのはジョン・マルコヴィッチのハリウッド仲間役として出演しているチャーリー・シーンの場面と、マルコヴィッチ自身がマルコヴィッチの穴に入った場面だ。
チャーリーは中盤とラストに出演しているのだが、そのラストの滑稽な姿は見もの。
よくぞこの映画の出演を引き受けたなという体当たりのギャグぶり。
それは、まあ、ジョン・マルコヴィッチ自身にも言えるのだけれども。
マルコヴィッチ度★★★★★