FIFA2006のイタリア対フランスの決勝戦は、サッカー史上に残る衝撃的な退場劇があまりにも強烈過ぎたために、その部分だけクローズアップされてしまっては勿体無いシーンがわりとある。
僕にとってそのシーンは、アンリがゴール間際でDFを見事に捌いてゴール前にパスを出す場面と、後半でジダンが肩を負傷してピッチに声を掛ける場面だ。
後半5分を過ぎたところで、世界最高峰のFWと謳われるアンリがペナルティエリア手前からドリブルでDFを3人抜いてゴール前にパスを出したシーンは、日本時間では夜明けだっただけに目を覚ますのに十分な場面だった。ボールが足にくっついているみたいに次々とDFを切りかわす。あの瞬間、ゴール前にボールを出したアンリはまさに神がかった選手であった。
もうひとつは、後半の途中でジダンが肩を負傷して、フィールドに座りピッチに声を掛けるシーン。
この試合が引退試合である神の愛した選手の動向を、全世界のサッカーファンが注目していたと思う。
肩をどう痛めてしまったのか、世界がまさに固唾を飲んだ。
ピッチに何かフランス語で話すジダンの目はとっても透き通っていて、純粋そのものだった。
サッカー選手ってこんなに切ない目をするんだろうか、そんな風に思った。
この偉大な選手の試合が観られるのは、残りあと僅かなんだなんて考えると、どうしても感傷的にならざるをえなかった。
ましては、延長戦に起こってしまったヘディング事件なんて微塵たりとも予想できないのであった。