・ 馳 星周「不夜城」
騙す奴より騙される奴が悪い。
日本屈指の歓楽街・歌舞伎町、そこに潜むように存在している劉健一。台湾人と日本人のハーフ。
いまや歌舞伎町は中国マフィアが牛耳り、アジアンコネクションがものを言う世界。
半々(ばんばん=混血)となじられるも、その狭間で利権を求め、器用に蠢いていた健一のもとに友人の呉富春が現われる。それによって、健一自身の何かが狂い始めてきた。
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最初に断っておくけれど、この作品は、どうしようもない連中しか出てこない。
近親相姦の関係にある呉富春とその妹。
生き残るためには血族や友人、そして恋人ですら裏切り、時には自らの手で殺めてゆく健一。
アンダーグラウンドにしか生きてゆけない、堕ち続け騙しあい嘘をつく登場人物たち。
誰かを信用することは命取り。
こんな小説に、いったい誰が共鳴できるんだろうか。
正直出てくる人物がどいつもこいつも吐き気を催す奴らばかりだ。
でも決して目が離せない。
まるで劉健一に、小説を読んでいる自分自身が裏切られたような既視感。
作者の馳星周の闇を覗くような小説だ。
読了後に歌舞伎町を歩くと、きっと今までと違う感情になるだろう。
恐らくは緊張することになる。
歌舞伎町にだけ漂う独特の空気の匂いを感じ取ることが出来るかもしれない。
暴力的で切なくて時にはエロティックな匂い。
金城武が主人公の映画「不夜城」、こちらも原作に劣らず良い出来である。ぜひ。
金城武はUO廃人だったんだよ
ぷぷ、そうなんだ。意外と多いのかもね、芸能界って。