ガタカ【1997年 アメリカ】
監督:
アンドリュー・ニコル(Andrew Niccol)
音楽:
マイケル・ナイマン(Michael Nyman)
キャスト:
ヴィンセント --イーサン・ホーク(Ethan Hawke)
アイリーン --ユマ・サーマン(Uma Thurman)
ジェローム --ジュード・ロウ(Jude Law)
現在からさほど遠くないだろう近未来。
人類は出生の段階で、優れたDNAであるのか、そうでないのか差別されている。遺伝子的劣勢を持った者は生まれた時点で〝不適合者〟とされ、大した仕事に就けずに、トレイ掃除などをして一生を終える。
兄という立場にありながら〝不適合者〟に生まれ、遺伝子操作で生まれた〝適合者〟の弟に全ての能力で追い越されるヴィンセント。
宇宙飛行士に憧れるも、心臓疾患で寿命30年と決められた人生。
そのヴィンセントの前に最高の遺伝子を持ち合わせつつも、運命には恵まれなかった〝適合者〟のジェロームが登場し、ヴィンセントと契約を結び協力することによって、ヴィンセントは〝適合者〟に成りすますことができる。そして、優れた遺伝子を持つ者しか勤務が許されないガタカに潜入するが・・・。
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イーサン・ホーク、ユマ・サーマン、ジュード・ロウと、豪華な俳優陣が登場するSFヒューマンドラマ。
イーサン&ユマは、この作品がきっかけで結婚する(04年に離婚)。
また、当時はまだ無名だったジュード・ロウが、ハリウッドで一気に注目を浴びるきっかけになった作品としても有名。
SF映画というよりはヒューマンドラマに近い「ガタカ」は、派手なアクションやCGがあるわけではなく(むしろ皆無)、淡々と物語が進む静かな作品だ。
この映画を鑑賞した人の多くが恐らくは「美しい」と評価するように、静謐な雰囲気を兼ね備えた映画である。
不適合者として生まれつつも、決して諦めないヴィンセントのひたむきさと熱意と情熱。それはあまりにも巨大な壁に立ち向かう非力な動物のようであり、時には悲しい。
適合者ではあるが、宇宙飛行士にはなれないアイリーンを演じるユマ・サーマンが、まるでアンドロイドのような完璧な姿で登場し、ヴィンセントが何者なのか戸惑いつつも、彼に惹かれていく様子が描かれる。このあたりのラブストーリーも決して陳腐じゃないので必見。
また、最高の遺伝子を持ち合わせながらも不遇な運命を送る孤高の天才を演じるジュード・ロウの演技が素晴らしい。映画「A.I」でもそうだけど、ジュード・ロウは〝どこか人間離れした〟体温が低そうな役柄を演じるのに長けている。
〝不適合者〟であるヴィンセントを侮蔑せずに、むしろ彼の夢を託すように協力し合い、友情さえ芽生えているあたりが泣き所。
単なる努力すれば報われるというテーマではなく、何事も諦めてはいけないと、決して汗臭くなく爽やかに観客に伝えようとしている。
ラストの検査官が登場するあたりは名場面。彼が登場することで厚みが帯びる。
そして最後のジュード・ロウの演技は、きっと静かな感動を呼び起こすであろう。
スタイリッシュにテーマが深く、幾度となく鑑賞しても新しい発見がある映画だ。
SFヒューマン度★★★★★