米を原料とした焼酎で、日本酒が日本米を使うのに対して、泡盛は細長い種であるインディカ米を使うのが特徴だ。
東京でも沖縄料理はポピュラーになりつつ、1つの料理ジャンルとして広く親しまれて、タイ料理やベトナム料理のように繁華街に行けば沖縄料理の専門店にありつけたりする。
沖縄の方言で書かれたメニューを読み上げると、日本語というよりは言語学的にも南方のインドネシア語かと思うぐらいの難解な言葉。
「チャンプル」という言葉が沖縄でもインドネシアでも〝ごちゃ混ぜにする〟という意味だと思うと、どうしても唸らざるを得ない。
さて、こちらの泡盛「白百合」は石垣島で造られている。平均年齢55歳の池原夫婦が営む池原酒造所が蒸留元だ。
洗米に始まる全ての工程が手作業で行われ、夏の暑い盛りには泡盛造りを休み、石垣の自然の流れに身を任せていままでやってきたという。
そんな池原酒造所の「白百合」は、その清清しくて爽やかな草原をイメージする名前とは裏腹に、土の香りがたっぷりと注がれたクセのあるお酒だ。
一口呑んで口中に拡がるカビのような独特の湿った香り。
呑んだ瞬間に「陽の当たらない裏庭の地面と同じ香りがする」と僕は表現したけれど、これは決してけなし文句じゃない。
褒め言葉だ。
ジメッとした苔に似たテイスト。
芋焼酎ともまた違った個性的なくさみ。
湿り気のある地面に生えた黴の香りだ、間違いない。強烈である。
呑めば虜になるだろう。すぐに熱烈なまでに惚れこんでしまった。
この匂いこそが泡盛の真髄なのだろうか・・・。
聞けば、このお酒、オールドタイプ「古酒」があるという。クースーだ。
いったい、どんな味があってクセがあるのか、想像しただけで愉しくなってくる。