2006年08月22日

失われた栄光

90年代の環七ラーメン戦争で常に話題をさらっていた店といえば、全国的に名声を轟かせた、ご存知「なんでんかんでん」である。

タクシー運転手やトラックの運転手からの口コミで広がり、深夜にも関わらず一杯のラーメンを求めて長蛇の列に並んでいる人たちの映像を、どこかで見たことがあることだろうと思う。

僕自身も、いつだったか、深夜のラーメン屋特集で、「芸能人だろうと並ばないと食べられないんですよ」と店主が得意げに話していたのを憶えている。

そしてその店主、飛ぶ鳥も落とす勢いで気がついたら深夜番組「マネーの虎」の虎サイドに座っていた。

驚嘆し、ビビった。ラーメン屋の店長、恐るべし。

でもなぜか、よほど旨いんだろうなぁと感じるよりは、よほど儲けているんだろうなぁとしか思えなかった。

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やがて時が経って、環状七号線沿いのラーメン屋事情に変化が訪れた。

小泉内閣が提唱している〝改革〟の影響だ。

民間に〝駐車禁止〟業務が委託された余波で環状線沿いのラーメン屋さんの集客率が下降しはじめた。

そこで、余力がある、つまりは財力がある店舗は次々と都心部に店を構えだした。

そのうちのひとつが「なんでんかんでん」だ。2006年に歌舞伎町に進出。

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先日、夏バテをしているから、大量に呑めないけど、新宿で飯ぐらいなら食べられるというケンカネコ氏を無理矢理に説得して、「なんでんかんでん」に行った。

僕はこの日はいわゆるラーメンモードな夜だったのだ。

しかも醤油ラーメンじゃなくて、豚骨を食べたいという、イケイケなラーメンモードだった。

桂花ラーメンはちとキツイというので、こっちにしたのである。

「なんでんかんでん」を食べるの2人とも初めてだったから、豚骨でも仕方ないよとケンカネコ氏が応じてくれた。

歌舞伎町に次々と有名ラーメン店が進出しているので、さながらラーメン戦争のようだった。

元気な呼び込みが「なんでんかんでん」の宣伝をしている。店内はそれほど混んでいなかった。

白い基調の店内に、明るい照明が灯ってジャズが流れている。

店員も活気があって宜しい。

餃子とビールを頼んで、ラーメンを2杯頼んだ。餃子は水餃子だった。

別に可もなく不可もなくという出来具合。

ビールのつまみになればいいやってノリなので、箸で突く程度。

そして満を持してラーメン登場。

テレビで観たあの「なんでんかんでん」をついに!!

お互い無言になり、否応なしに期待が高まる。

見た目は濃厚な豚骨って感じだ。

雰囲気は北九州ラーメンの魁龍に似ていなくもない。魁龍は旨すぎる。

きっとここだってカルチャーショックが待ち構えているのだろう。

ただ、海苔に白い文字で宣伝が入っているのが失笑。

CDを出したとかどうのこうのとか書いてあった。

ラーメン屋がCDを出して誰が聞くというのだろうか、疑問が生じたけれど、こういうのが虎達で話題の多角経営ってやつなんだろうと思ってコメントせずに流した。

いよいよスープを啜る。

ズズッ・・・。

がっっちょ~~~ん。

俺の舌は故障したのか?

味がしない。濃いだけの豚骨スープじゃん、これ。

何度も漉くって啜っても、コクとかが見当たらないのである。

お湯で煮詰めただけの豚骨スープという感じ。

それともアレか、侘びとか寂びの境地を切り開いた革命的な豚骨とでもいうのか?

ドロドロの豚骨に麺が浸っているだけだ。

不味いというか、とにかく味というものがない。味覚障害を心配しちゃいそうな勢いである。

衝撃を隠せずに蓮華を置いてふと見上げると、ケンカネコ氏がかりんとうと間違えてうん○を食っちゃったような顔して固まっていた。

ヤバイ、忘れてた、やつは夏バテだったのだ・・・。

泣きそうな友人を励ましつつ、僕らは無言でなんとか完食した。

下手にお腹がいっぱいになったのが悔しい。

腹が膨れていなかったら他店で食べなおすのにという感情が自然に出てきた。

もう二度と「なんでんかんでん」食べない。だって美味しくないんだもの。新宿店は並ばずに入れたのが唯一の救い。

もしこれが往時の行列店で待たされて食べたとしたら、目も当てられないな。

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投稿者 ko : 2006年08月22日 19:19 | トラックバック(0)
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