2006年08月30日

森の生活

・H.D. ソロー 「森の生活」(上)(下)

街から離れ野性味溢れた生活を送りながら、哲学的思想を育み、米国文学史上の稀有な存在として、19世紀半ばに登場してから人々を魅了し続けているソロー。

ウォールデン湖畔に自らの手で家を立て、僅かなお金をもとに2年2ヶ月の歳月を過ごした生活を詳細に記した本だ。

元祖ナチュラリスト。自然哲学者。今でもキャンパーやアウトドア好きのバイブルとして名高い。そしてアジアやインドを旅している人の多くが持っている本がこの本だった。

畑を耕して生活をサイクルし、時折、余剰の農産物を売って換金したりする。

資本主義社会とも共生する自給自足のライフスタイル。

畑からは採れない生活品(油、燃料等、種、古着の衣服)についてもどのような方法で補完するか詳細に及んでいる。

ソローの優れた点は、決して社会から切り離された孤立的な存在ではなく、また、生活自体が文化的なマイノリティに陥ることはなく営まれている点だ。そして、彼は社会全体に在る一人の構成員として行動し、外部にきちんとリンクしている。

森の中で孤独とどのように向き合うのか、内省的に考察することで、築かれたアウトドアライフ。必読である。

ちなみに、本作品はP・オースターの「幽霊たち」に、物語を進めるにあたって重要なアイテムとして登場する。

米国文学史に名を連ねる作品を、ユーモアと軽い皮肉を織り交ぜて自分の作品に堂々と引用するあたりがオースターらしい。こちらも必読。

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投稿者 ko : 2006年08月30日 19:19 | トラックバック(0)
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