・永島慎二 「フーテン」
〝新宿〟という言葉が輝いていて、〝新宿〟にさえ行けば、きっとどうにかなっていただろうという時代のお話。
フーテンと呼ばれるヒッピー達は、東口や西口に集まり、大量の睡眠薬を一度に煽り、その効能で酩酊して朝まで過ごす毎日。
サンフランシスコのヒッピーのように陽気ではなく、人生に疑問を持ちつつもダラダラと哲学的に悩む現状から抜け出せないフーテンや自分探しをする若者。
何所となく翳りがあって、ウェットな雰囲気が最高。
新宿の深夜喫茶で朝を迎えたあとに、そのまま海に出かけ、砂浜でハイミナールを齧ってトリップをしてはしゃいで海に飛び込むシーンと、焚き火を囲んでサイケデリックに踊り明かしているシーンが個人的に気に入っている。当時のサブカルを知るだけでも必読だ。
但し、漫画自体は惜しくもすでに絶版。何度か再版されているが、そのいずれも同じように重版の予定がない。楽天ショップやamazonで古書を手に入れるのが良いだろう。
著者の永島慎二は残念ながらに鬼籍に入られてしまった。合掌。
フーテン [文庫版:コミックセット] 永島慎二 講談社(文庫) |