・永島慎二 「漫画家残酷物語」
全3巻で完本なのだが、残念なことに3巻の発売のめどが立っていないと噂されている「漫画家残酷物語」。
故・永島慎二の代表作のひとつで、発表当時、60年代の若者達の支持を受けた。実際、彼が住んでいた中央線の阿佐ヶ谷は漫画の聖地とまで称えられたという。
今回販売された「漫画家残酷物語」は、現存していないとされた生原稿によって復活した独自のタッチが生かされているホンモノ(以前から復刊していた同作は、永島氏のアシスタントが当時の漫画からトレースしたものであった)である。
つげ義春とは似て異なる独特のウェット感、これが永島作品の真髄で、やるせない若者の青春が見事に描かれている。
青年の葛藤を漫画で体現したのは、まさにこの作者が最初なのではないだろうか。
雨が降って、どこにも行くことのない午後に読むと、かなり自身の内面に滑り込むことができる漫画だ。昭和50年代初期に朝日ソノラマから発売されたものは希少価値が出ているので、お手ごろなだけに永島作品の入門編として手に取るのも良いだろう。