2006年12月18日

聖者とトナカイとクリスマス

今年もいよいよ残り僅かになったというと、歳末ならではの言葉で、折りしも我が家の向かい側にある団子屋さんが<正月用の切り餅あります>と看板を出したりすると、いよいよだなぁと肌で感じる次第である。

商店街のジングルは12月24日前ということもあり、クリスマス一色なのに、街全体の雰囲気は、大晦日と元旦がメインというのも愉快である。

ところで、「クリスマスの過ごし方」というアンケートでは、<家族といっしょに過ごす>というのが回答の圧倒的首位を独占(73.9%)で、自宅で聖なる夜を過ごすというのを、みんな望んでいると、先日ニュースになっていた。

この回答は、バブル時代の一瞬をかすったことがある僕ぐらいの世代では、ちょっとした事件&衝撃で、というのも、バブルが弾けたあとの不景気的のころ、バブルの余韻というよりはその亡霊を追っていた世の中ですら、クリスマスというのは<恋人と一緒に自宅以外で過ごすもの>で、どちらかというと「性なる夜」ぐらいハメ傾向の強い特定日だったからである。

相手がいない連中は、クリスマス前の数週間に合コンの予定をいれたりして、突貫工事のように即席で相手を見つける有様だった。

それほど、この日は逆に言えば<家以外で過ごす>日だったのだ。

コンチネンタルのホテルを予約して、摩天楼を眺めつつ、クリスマスを祝い、時計の針が24時をしめした宵の刻に、赤と緑のリボンでおっぱいを結んだ彼女が「プレゼントは、わ た し」と言ったとか言わなかったとかという詰まらないパーティジョークが流行った時代である。

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そんなふざけきった時代のふざけきったクリスマスイブ、先日既婚した友人と僕は12月24日の晩に、渋谷の宇田川交番の向かい側にある居酒屋で5on5の合コンを開催したことがある。

クリスマスに合コンをしませんかと誘って、そのお誘いに応じるくらいのキャパシティを持ち合わせた女子は、やはり<その場とそのタイミングに相応しい>女子が集まった。

ルパン三世の五右ェ門が所有する日本刀は雪を溶かす不思議な刀だったけれど、この日の女子達は「そんな格好してるけどカルフォルニア帰り?」と尋ねたくなるぐらいチラリズム全開で、僕らの寒いハートを溶かしてくれた。

もちろん終電で帰りますなんていう、たわけた発言もなく、西武池袋線の椎名町にある友人宅の2次会もへっちゃらな連中だった。

つまり、こんな薄っぺらい合コンが開かれるぐらい、クリスマスというイベントは、自宅で過ごさないことが様式美として一目をおかれ、最重視されていた。

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だから、たかだか10数年あまりで<家族といっしょに過ごす>という、世間のクリスマスへの嗜好が変化するのは単純に面白い。

ボトム階層では経済的に支出の幅が不景気と変わらないとか、こういう「自宅回帰」の話題が登場すると必ず小難しいエコノミーな発言が出てくるけれど、まあ、それは置いといて、感慨深い何かがあるじゃないか。

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といいつつ、そんなかくいう僕も、クリスマスイブは決まって実家近くのジャズバーで過ごすというのを5年ぐらい続けていたりするので、今年は24日が日曜日だけに、どうしたもんかなと思いあぐねているところだ。

いっそ、全裸姿で腰の部分にトナカイの頭をくっつけて、鼻に割り箸を差した状態でラフィンノーズの「聖者が街にやってくる」を爆音でかまし、サンタのコスプレパーティを自宅で開催するというのも、世の風潮に倣い<自宅回帰>を尊重しているし、好景気を予感するようで良いかもしれない。

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投稿者 ko : 2006年12月18日 19:19 | トラックバック(0)
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