インドネシアのバリ島山間部ウブドに一軒、サテーと呼ばれる、ピーナッツバターやらマサラを混ぜた味噌ダレを鶏肉に塗るバリ郷土料理の焼き鳥が炭火で食べられる店があった。
延々と続くライスフィールドを眺めつつ、沈む夕陽に心を奪われ、何処かで奏でられるガムランに耳を傾けビンタンビールで乾杯するという、究極のシチュエーションの店だ。
バリ島ではクタビーチでもスミニャックでもレギャンでもチャンディダサでも、とにかく至るところでサテーを食べてみたが、そのレストランが出すサテーは本物だった。
竹を割った皿に真っ赤な炭が炊かれて、串に刺さった焼き鳥がジジジッと脂を照からせ芳醇な食欲をそそる香りを醸す。
少し焦げたピーナッツバターがビールにピッタリで、ウブドに滞在している期間、何本平らげたか分からない。
それに引き換え、日本に(東京に)あるバリ料理の店は閉口するばかりで、食べれば食べるほど、バリ島への郷愁が強まってしまうシロモノである。
その代わり、日本には日本のサテー、つまり、焼き鳥がある。
焼き鳥やもつ焼きについては、昔から中央線沿いが旨いのが定説だけれど、案外、私鉄沿線にも美味しい店があることを最近知った。
某私鉄某駅徒歩1分の焼きとん屋の味噌ダレは、秘伝だと胸を張るのが頷けるぐらいに完璧で、酔うと分かっていてもホッピーがどんどん進む。たんしたという串はむっちりと歯ごたえがあって、ウブドで経験した驚嘆をそっくりそのまんま味わうことが出来るのである。
そして、1本100円なのに、丁寧に炭で焼きを回すご主人にはいつも感心だ。
さて、今日はまだまだ火曜日、3日も平日が残っているのに、こういう文章を書くと、なんだか寄り道して呑みたくなる。困ったもんである。