最近は大箱のイベントに行く回数が全盛期に比べてめっきり減ってきたとはいえ、まだまだ気分は現役である。
腹は出ても心は錦。きっとみんなも共感してくれるはずだ。
でも、どうだろう。何かに甘んじてナマクラになっちゃいないか。つまり、日常という名の惰性にかまけて、たるんでいるんじゃないか。
服装の乱れは心の乱れというのが世の定説だ。ということは、近年の自分はまるでなっちゃいないということになる。格好が全てじゃないけれど、昔の俺はとんがってた、そんな風に思いたい。
忠臣蔵に登場しそうなベルボトム、ブラックライトに照射されれば視力がガタ落ちしても不思議じゃないスペーストライブ、両腕にはビカビカに光る腕輪、サイケデリックな絞り染めの長袖、そしてA・ローズだって逃げ出しそうなピチピチのゴアパン。これが本来の戦闘服ってやつじゃないのか?
だとしたら、昨今の俺は渋谷にパジャマで現われる女子高生並みに恥ずかしい。会社で着ている洋服とおんなじ格好でパーティに来ちゃってるじゃないか。もっとかぶけ、前田慶次だったらビンタをかますところだ。
触るもの皆傷つけたい、いや躍らせたい。そんな気持ちを久しく忘れてた。
ゴアパン2号(暴走族の車に登場しそうなファイヤーパターン)は寝巻きになっている。
こんなんじゃいかんぞ。そう思ったら、居ても立ってもいられなくなった。
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2月20日の平日の夜。
残業が終わりシケた顔して、家に帰宅すると、すぐさまタンスのこやしと化している戦闘服に着替えた。
時刻として20時過ぎ。別に今夜ベイホールでJorgが回すわけじゃない。だいたいベイホールなんて、もうトランスを流してないのだ。
だが、しかし…、そう、自分に鞭を打つ気分で着替えた。このままだと腑抜けになっちまってヨボヨボのじじいに成り果てるぞと言い聞かせた。
足元は悩んだ末に95年ごろにパーティで履いていたナイキの靴。とりあえず勢いよく飛び出し、駅前のコンビニに行く。
ふふふ、周囲の注目が熱い。背中が視線で火傷しちまいそうだ。
鋭い勘を巡らせれば、誰かが声を掛けてくるタイミングである。
「ねえ、ちょっと君、いいかな」
ほーら来たぞ、俺に踊らされたい奴が。
勢いよく振り向くとそこにはチャリンコに乗った交番のお巡り。
ガビンッ。
彼は続けた「いまからどこに向かうのかな?」
職質だった。30過ぎて職質だった。
なんにも悪いことしていないのに職質というのはいつもドキドキする。
そして、苦し紛れに口から出た台詞は「コンビニにスピリッツを立ち読みに行こうと思いまして・・・。」
しょっぱすぎる。ガチでしょっぱすぎて涙すら枯れそうだ。船木に頼んでマットに沈めてもらいたい気分だった。
余所行きの格好は週末だけにしよう、心の底から本気で誓った。
(実話)