・山川直人「コーヒーもう一杯」
スクリーントーンを使用しないで、<かけあみ>のタッチにこだわりを持つ作家、山川直人が描く登場人物や風景は、どこか郷愁を誘う世界である。
一話完結のオムニバス形式の漫画は<一杯の珈琲>を題材にして淡々と進む。心温まる物語もあれば、少しホロ苦い物語もある。
誰もが、一杯の珈琲に色々な思い出や気持ちを抱えているように、作品の登場人物もまた何かを抱え、そして泣いたり笑ったりしている。読み終わった後に、ネルドリップで一杯淹れたくなるような、お気に入りの珈琲屋で心ゆくまで珈琲を味わいたい気持ちにしてくれる、そんな作品だ。
決して賑やかな物語が用意されているわけではない。むしろ、静かに、都会のどこかでひっそりと繰り広げられているドラマみたいにゆっくりと展開していく。
ささやかに、けれども確かに心から満足できる漫画である。
一押しだ。ぜひ、いろんな人に読んでほしい。待望の3巻もそろそろ発売!