・Golden Best 15th Anniversary(ZARD : B-Gram 2006)
19993年といえば僕にとって大学受験の浪人時代のことで、予備校に通っていた日々のことを指す。団塊世代ジュニアと呼ばれる若者の受験層が一番厚かったのが1993年であり、大学受験は困難を極め倍率は軒並み上昇したのもこの年であった。
高校3年生の時に「俺は絶対に早稲田以外は受験しない!」と、ロクに勉強もしていないくせに決意したおかげであっさりと野に放たれたわけである。
通っていた予備校では授業が終わると自習室に向かうのが日課で、<ながら勉強>の習慣が抜けきらない自分は耳にイヤフォンを差し込むのが当たり前になっていた。当時といえば、まだカセットのウォークマンが主流。録音機能とFM・AMラジオを搭載している機種が人気が高く、僕が持っていたのもそのタイプだった。
だが、さすがに<ながら勉強>といえども、カセットは何個も持っていれば、それはそれでかさ張るので、だんだんと億劫になり、次第にFMラジオを聴くようになった。インターFMは開局していなかったので、おのずとJ-WAVEがメイン局となった。
くだんのZARDのことを僕自身、じつはよく知らない。アルバムも買ったことが無いし、熱心なファンでもない。寧ろJ-POP自体を認めようとしない非常におこがましい年齢だった。若かったのである。
でも、「負けないで」がリリースされたのはこの年なので、恐らくはJ-WAVEにおいてもたぶん流れていたんだろう。歌詞を口ずさむことができる。
そして無意識的にせよその歌声と歌詞に受験生の僕は励まされたのかもしれない。
考えるに、ZARDというバンドもまた僕らの世代を縁取る青春の一部なのだ。坂井泉水が亡くなったというニュースは一抹の影を僕に落としたのは意外だった。彼女の早すぎる逝去は、いつまでも存在していると信じて疑わなかった自分の思い出深き校舎を久々に訪れてみたら取り壊し工事をしていた。そんな喪失感に似ている。