2007年07月30日

大阪+

・森山大道「大阪+」


二十歳少しまえのぼくの日常は大阪だった。その頃の大阪、その頃のぼくをいま思い返すと、それはほとんど絵空事として瞼に映るばかりだ。当時若いぼくにとって、心の針はひたすら東京へと指しつづけていた。そして現在、ぼくの心の針は再びぐるりと回転し、大阪の街々へと立ち戻りつつある。それは、大阪に生れたぼくの郷愁であろう。ただ、レンズの向うに映る大阪の街頭は、いまも相変らずしたたかで、いとも簡単にぼくの郷愁を裁ち切ってしまう。


1997年にヒステリックグラマーから刊行された写真集が全面再編集&増補されて月曜社から出版された。「新宿+」と同じ文庫サイズだ。

「新宿+」と同様に、分厚いボリュームなのに破格の写真集だから、かなりお手ごろに入手しやすいだろう。

この写真集を見たとき、僕が感じたのは「大阪は直球勝負の欲望の街なんだな」ということ。森山大道のコントランスが強い写真がそのように想起させるんだろうけれど、大阪の街はいまでもやんわりと嗤っていて、それでいて底知れないパワーを潜ませ人々を文字通りにケムに巻いているような気がする。

「新宿+」の写真は、ギザギザしていて街が苛立たしい顔をしている感じがした。「大阪+」で映る写真には少しばかりの愛がある。それは作者が投影させる郷愁心なのかもしれない。

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投稿者 ko : 2007年07月30日 19:19 | トラックバック(0)
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