2010年02月27日

いるのにいない日曜日

・三好銀 「いるのにいない日曜日」

バブルだ好景気だと日本全体が狂乱して浮かれていた90年代初頭、スピリッツにある漫画が掲載された。

三好銀の「三好さんとこの日曜日」である。

バブルとは縁遠い、どちらかというと、いまの時代にマッチングするような等身大の生活を描いた名作で、連載当時から少数ながら一部で支持を受けていた。

ところで、漫画業界で寡作な作家といえば、高野文子か三好銀で、それでも高野文子はコンスタンスに作品を出しているし、何よりも定数のファンがいるので、たとえばヴィレッジヴァンガードのコーナーに行けば見かけることは多いけれど、一方の三好銀はまったく新作が出ないで<あの人はいま!?>状態で、単行本化された「三好さんとこの日曜日」はあっさりと絶版になって、時たま古本屋で見かける程度(お願いだから再販して欲しい)。

僕はこの本を古本屋で見かけるたびに買い揃えるという、いささかビョーキがちなんだけど、もし、一番好きな漫画は?っていう難題を吹っかけられたら三日三晩悩んだ挙句に、きっとこの作品を挙げるだろう、それぐらい思い入れのある作品である。

ただし、残念なことにこの「三好さんとこの日曜日」には未収録の作品がある、というのがファンの中では公然の事実で、小学館はよ出せやゴルアでもあったわけだ。

その幻の作家といわれた三好銀の、幻の作品である日曜日シリーズの未収録が発売となったら買わないわけがない。

またネーミングがいいのである。「いるのにいない日曜日」。

物語は、夫婦ふたりと猫一匹が織り成す、何処かにありそうな日曜日を四季折々に描いている。アパートに住む夫婦の生活は僕の憧れである。こういう暖かい日々が過ごせたらいいな、と思う。ゆったりとした空気が流れて、決して華美ではないけれど、小さな幸せと出来事が詰まっている生活。猫と一緒に三人で過ごす日曜日。たとえ明日が月曜日でもこんな日曜日が好きだな、そんな週末。

今回の帯の言葉も秀逸。


夫婦二人と猫一匹
四季折々の休日。
ささやかで愛しき日々。
あれから長い時が過ぎても、三好さんところに
「日曜日」は来る。


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2010年02月26日

久我山「甲斐」

山梨市にある有名なラーメン屋「おかめ」は、常に行列が絶えないわけだけれども、その息子さんが東京に上陸して、しかも春木屋で修行してからお店をオープンしているという。京王井の頭線久我山駅から徒歩1分にある、その名も「甲斐」である。

カウンター7席を若主人が切り盛りしているので、親父さんに負けず劣らずでこちらも毎日行列だ。
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写真は中華そば(600円)。

何度もスープを慎重に調合している姿がまるでサムライのようである。登場するお椀からは、煮干のぷんと強い香りが漂う。麺は自家製の太麺でやや縮れていて、なかなかの歯ごたえである。スープは醤油がベースで、まろやかな魚系の風味が満載だ。飽きのこない正統的なスープがいい。くどくないのに印象に残すスープというのはラーメンでは難しいのだ。

そして、なんと言っても秀逸なのはチャーシュー。ローストしてある肉は脂が程よく乗っていてジューシーである。ただ、それだったら何処に行っても食べられる。ここのチャーシューはさらに香味が加わっていて、それがお肉に染み込んでいる。絶妙に計算されたスパイスが散らしてあるのだ。このチャーシュー、これまでに食べたラーメンは数多くあるけれど、冗談抜きでいままでで一番旨い。中華そばを頼んだのが悔いに残る。ここは絶対チャーシュー麺だ、次回は。

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中華そば・つけめん「甲斐」
杉並区久我山2-27-1
火曜日、第4水曜日、定休
11:30~15:00
18:00~20:00(スープ切れまで)

中華そば --\600
味玉そば --\700
チャーシュー麺 --\850
味玉チャーシュー麺 --\950

つけめん --\680
味玉つけめん --\780
チャーシューつけめん --\930
味玉チャーシューつけめん --\1030

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2010年02月13日

不思議の国のアリス症候群

「アリス症候群」

寝ても覚めてもシンジタニムラとタカオホリウチのことで頭がいっぱいの現象・・・なわけがなくて、正式には「不思議の国のアリス症候群」というらしい。

中二病を患っているときに併発しそうな症状で、たとえば授業中になんだか解らないけれど突然と自分の右手が大きく感じるとか、逆に教室の大きさが変に小さく感じてしょうがない数分を総じて「不思議の国のアリス症候群」と言う。

皆さんはこういうのありませんでしたか?火曜日の6時間目とかにシーンとしている授業中に感じる変な違和感。

ウィキペディアによると、「典型的な症状は、眼に障害がなく外界が通常と同じように見えていると考えられるにもかかわらず、一方では主観的にそれらが通常よりも極めて小さな、または大きなものになったように感じられたり、ずっと遠く、あるいは近くにあるように感じられたりする。」とある。

詳細はウィキに譲るとして、この症候群の原因はナントカカントカというウイルスのせいで、日本ではこのウイルスに子供の頃にほとんど感染するから、ガキんちょの頃に時折起きる現象なのだとか。

不思議の国のアリス症候群
(ふしぎのくにのアリスしょうこうぐん、Alice in Wonderland syndrome, AIWS)
リンク

じつはおとといぐらいから風邪を引いているんだけど、小さいときに風邪を引くと必ず見る夢(完全にナイトメア)が、こんな感じだった。

全てが無音の世界でその無音の世界に地球ぐらいのツルツルした球体と同じ材質のスーパーボールみたいな小さな球体がある。ただそれが並んでいるだけ。でもその並んでいる光景と、その球体の大小の差がどういう理由なのか恐怖のバイアスを増幅させてとにかく恐ろしい。たいては汗びっしょりで目が覚める。

あんな夢見るのって自分だけだったのかな?と思い検索したら出てきたのが、このウィキペディアの頁で、風邪の時の事例もばっちり載ってた。なるほど、そういうことか。

ちなみに日によっておっぱいが大きく見えたり小さく見えたりするのはほとんどブラジャーのせいで、アリスとは無関係というのが某キャバ嬢のお言葉である。

あと、この症状の略語のAIWS、なんかフィンランドのメタルバンドあたりにありそうな名前だよね。

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2010年02月12日

ほぼ日手帳

20100212
前々から気になっていた<進化系手帳>の代名詞である「ほぼ日手帳」の2010年度春始まり版を購入してみた。手帳?そう、手帳である。

私用業務用でiphoneが2台、ドコモとソフトバンクの携帯がそれぞれ1台の合計4台の端末があり、しかもスマートフォンが2台も含まれていて、outlookのexchangeとさいすけでスケジュール管理している状態で、なおこの場に於いて紙にアウトプットする情報があるのかと自分でも不思議に思う。

というか、むしろ要らないだろうという気持ちのほうが先行する。きっかけは2ヶ月ほど前のTLで堀江さんが「手帳とかってもういらなくね?」的なツイートをしたのがトリガだった。僕もおおむね「手帳なんていらなくね」派だったし、事実、手書で書くより数倍の速さでタイピングが可能なので(iPhoneのフリック打ちも、もう慣れた)、手帳を持つ理由がないんだけど、どうしてか買った。

自分でも何で買ったのは説明するのは難しい。敢えて理由を挙げるとしたら、天邪鬼というのが答えだ。要らないじゃんって思う自分がいるからこそ、それに嫌疑をかけて真反対の行動を取る天邪鬼な性格。常にそんな部分で物事を試していたので、今回もそれに乗っかった。

第一、僕はそもそも何も書きもしないのに毎年6穴を交換している手帳を持っているのだ。

十数年前に僕の実家で居候していた旅仲間が餞別でくれたフィンランドの手帳。そう、あれは十数年前の2月のとある日のことである。

能天気な白痴的にご機嫌な朝、ミコが流すキラキラとしたモーニングトラックに身を任せてフルスマイルでディスコバリーで踊っていると、真っ黄色の手袋をしてグヨングヨンと踊り狂う日本人の女の子がいきなり僕を見てロックオンしてきた。

「鬼の子じゃぁ~!」と。

西瓜に話しかけたと思いきや、志村食いをして種を機関銃みたいにイスラエリに発射するパスポートのない残念な40代後半のオジさんとか、面妖極まりない妖怪組の生徒の行動にはすっかり慣れた自分だけれども、自分に向けられると流石にのけぞって、思わず口に含んだビスレリの水を吹いたのだ。

りらちゃん、それが彼女の名前である。

フランス人の彼氏と旅行しているりらちゃんは、前年のインドで僕を見かけたらしくて、当時の頬がこけて腰まで髪が長かった僕をずっと<鬼の子>と記憶していたらしい。まったく意味不明である。なので、ポニョの歌みたいに2回繰り返すだけで「名は体を表わす」状態のきらびやかな朝を迎えていたりらちゃんは1年ぶりに見かけた僕に思わず叫んだのだ。

その出会いをきっかけに、彼女とはその後も街のいたるところですれ違って、そのたびに「胃液を吐いて踊るとアガる」とか「ワカメには裏と表があるから気をつけたほうがいい」という数多くの有難い教えを説いてくれた。

それから半年後、旅ボケが収まらない僕のところに成田空港から彼女は電話を掛けてきた。インドを北上してネパールやタイを経由して日本にソロで戻ってきたらしい。

で、「居候させて」と。

僕も大学卒業してから「家にあまり居ないニート」みたいなデタラメな生活をしていたので、普通だったら断りそうなこの案件をアレコレ考えずに二つ返事で快諾した。

僕の家に居候したりらちゃんとの生活は毎日が漫画みたいで、そのエピソードだけで本が1冊書けそうなぐらいなんだけど、ここでは割愛するとして、居候してからしばらく経って、一度北海道の実家に戻るというりらちゃんが餞別でくれたのがフィンランドのシステム手帳なのだ。

だから、この手帳は旅仲間の置き土産として肌身離さず使う心掛けなんだけれど、まあ、ここは肉ばっかり食べているとたまには魚も食べたい精神に基づいて、<ほぼ日手帳>を。

それにしても、りらちゃん、どうしているのだろうか。ちゃんと生きているのを願うばかりである。

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