2007年07月31日

土用の日

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売れ残った鰻を何とかしたいという相談を持ちかけられた江戸時代の発明家・平賀源内が「丑の日に<う>が附く食べ物を食べたら夏バテしない」という江戸町民の伝承をヒントに、鰻を丑の日に売ったらどうかと言ったとか言わないとかというのが「土用の丑の日」。その慣習が現代でも残っていて夏の「土用の日」には鰻が飛ぶように売れる。


東日本、とりわけ東京の鰻は背開きにして蒸した後に炭火で焼き上げるのが主流である。これに対し西日本は股開きにして蒸さないで焼く。

どちらの味もそれぞれ試してみた感想は、慣れ親しんだ味だからだろうか、個人的には東日本式の背開きにして蒸した後に炭火で焼き上げる鰻のほうが滋味滋養の広がりがあって、鰻の独特の旨みが引き出されているように思う。これは好みの問題なので仕方ない。小さい頃からの味、というものだろうし。

昨今、中国からの輸入鰻から抗菌剤のマラカイトグリーンが検出されたとして輸入鰻の危惧が懸念されていた。産地偽装が無神経なまでに蔓延する世なので、たとえ国産と謳っていたとしても実際にはどんなシロモノが使われているかは分からなくなってきた。食べてからじゃ遅いというのも厄介だ。最終的には料理人やお店の人間の常識・良心・プライドに委ねるほかない。プライドのない人間が産地を偽装する。

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さて、鰻に話を戻すと、鰻というのは夏より冬のほうが旬で美味しいとか。それでも僕は夏の土用になると行列すらも覚悟して鰻を食べるよう心がけている。夏ばてしないよう祈願も含めて。願掛けみたいなものだ。

いま住んでいる街に、註文してから鰻を捌くというカウンター数席だけの職人技の鰻の店があって、値段も手ごろ、味は保証附き、つまみも旨い、まさに「鰻屋でせかすのは野暮」という言葉通りの穴場がある。鰻を註文してから45分は待つのだ。

老夫婦で賄っている当店は、土用の日は気の毒なくらい忙しいと耳にしていたので、ここで食べたかったけれど涙を飲んだ。四谷にある「うな浜」は潰れてしまったし、「宇な米」は予約で一杯なので、「宮川本廛」はどうかと思ったが、時計を見ると20時手前、やや厳しい状況である(ここは18時半に到着していないと食べられない)。

新宿に出向いていたので、新宿で鰻でもと頭の中で地図を巡らせると一軒あった。アルタ裏にある「小ばやし」だ。創業明治38年の老舗。江戸前の味を頑なに守り続けている店だ。

急ぎ足で店まで向かうと5組ほどが待っているだけで、何とか食べられそうである。20分ばかし列に並び、瓶ビールで喉を潤おした後、竹(2415円)を食べる。ふんわりした三河産の鰻が口中に広がり、目がほころぶ。今年もいい夏が迎えられそうだ。

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投稿者 ko : 2007年07月31日 19:19 | トラックバック(0)
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