1996年8月9日のその日は、ロスアンゼルスの西側にあるヴェニスビーチに居た。
真っ青なカルフォニアの晴天らしい空が広がっているそんな一日。住処にしているゲストハウスはイタリア人のゲイとシェアする羽目になったけれど、海沿いですぐにメインストリートに出られるという立地でしかも格安だった。目の前のビーチにはパール椰子が等間隔に並んで、ホットパンツにタックトップの金髪ギャルがウォークマンを聴きながらローラーブレードをしているというベタな光景。
もちろん僕はそんな風景に恥じないように、サングラスを掛けてバドを飲みつつホットドッグを齧り、オープンカフェの席に毎日座った。
ジェリーが逝去してからちょうど1年目だったので、ヴェニスビーチで野外パーティが開催されていて、噂を耳にした僕はゲストハウスで友達になったドイツ人と一緒にそれぞれの言語で「蛍の光」を大声で合唱して、会場に向かった。まったく言葉が異るというのに唄の終わりはピッタリと合わさったのでゲラゲラ笑った。
会場ではいたるところでお香が焚かれ蝋燭が灯されていた。各地から集ったヒッピーたちは泣いたり悲しんだりして、そして踊っていた。
メロコアが大好きだと言うので2日前の晩にハイスタのCDを貸してあげたイギリス人の女の子も来ていたので、バドとワインでジェリーを偲んだ。彼女は午前中から踊っていたらしく、涙で目を赤くして「Still love&miss you,Jerry」と小さく呟いた。
ジェリーが亡くなってから12年が経とうとしている。僕も随分と大人になった。
きっと嘆き悲しむより、ジェリーが僕らに感動を与えてくれた音楽にゆっくり耳を傾けて聴いたほうが似合う。いつのまにかそんな年頃になったようだ。でもね、やっぱり「Still love&miss you,Jerry」だよ。
R.I.P Jerry