いまから8年ぐらい前、知り合いの家で映画を観ていた。当時の主流はDVDではなくビデオだったので、レンタルビデオ屋で映画を借りて観たのだ。<プライベートライアン>という最高傑作を誇る戦争映画で、臨場感溢れる冒頭シーンは幾度となく回数を重ねて観たというのに震えが止まらなかった。
3時間近くある映画を完全に観終わり、気分はノルマンディだというのに、仲間のうちの女の子が僕に尋ねた。
「で、ライアンって助かったの?」と。
気分はすっかりミラー大尉だった僕は未曾有の脱力に襲われオマハビーチでドイツ第352師団に囲まれたような既視感をくらった。
でもこういうのって日常生活でも溢れていて「え、ウソでしょ?」と逆にこっちが聞きたい場面に出くわす。
僕の知り合いは数年間ベルリンの壁が崩壊したということを知らなかったまま生活していた。近くにこういう人がいるんだから、もしかしたら日本中を歩き回れば沖縄が返還されたことを知らない人が居るかもしれない。