2008年01月08日

さよならハリウッド

ヤリチン。

しばし耳にするけれど、なんて節操のない言葉なのだろう。

一男一女でシーソーゲームをしている市場に現われるトリックスター。股のあいだに暴れん坊将軍を携えている男の称号。ハメたもん勝ちの思想。

異性にはとんでもなく疎まれたり蔑まされたりするのに、不思議と同性からは絶対的な賞賛を浴び、羨ましがられる。

それがヤリチンというもの。

僕の知り合いの何人かは、ヤリチン傾向があって、それぞれ素性も年齢も異なるのだけれど、観察してみると彼ら特有の美学があるのだと最近気がついた。

それは「たとえ負けると分かっている試合でも<とりあえず>挑んでみる」精神だ。

ぜってー無理でしょっていう逸材に対してガチで勝負しようとする心意気。

彼らは逃さない。たとえその勝負に未曾有のリスクが潜んでいようとも決して臆さず果敢に挑むのだ。

そして、その勝負には途中敗退はありえない。勇者である彼らは「揉むところまではいけたのに」みたいな気弱な発言を絶対にしない。

インドのローカルな雑貨屋で売っているお菓子が、糖尿病になるぐらい甘いか、食った瞬間ゲロしそうにマズイかの二種類の味しか存在しないのとおんなじで、彼らの試合も結果として、まったく相手にされなかったか、きちんとハメたかの二つしかない。

オールオアナッシングである。

ヤリチン思想には難を示す僕だけれども、彼らの勝負に対するスピリッツはいつも感服する。

男として生まれたからには、どうせ負けるなら僅差で涙を飲むのではなく109対0で「悔しいです」と男泣きするという信条。

そういった面では非常に憧れる。

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でもこれは同じ土俵での試合が基本だからこそ頷ける武士道であって、違う土俵となるとそうはいかない。まったく別モノのジャンルだというのに戦わなくてはいけない場合。

茶道部の生徒がなぜか甲子園を目指し、そして敗退してしまった時に同じ気持ちでいられるであろうか。いられるわけがない。

昨日まで茶こしを手にしていたのになぜかグローブである。負けるはずだ。涙も枯れるだろう。

でも時として人にはそんな試合に挑戦しなくてはいけないこともある。

たとえ土俵が違うんだと分かっていても。絶対に勝てないって最初から知っていたとしても。

そしてそんな名勝負だからこそ発せられた敗者の言葉というのがある。人生勝ち負けだとしたら、こんなセリフを吐いて負けていきたい。

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映画の都ハリウッド。

古今東西、銀幕で華やかにデビューすることを夢見て男子はお尻で笛が吹けるように、女子はおっぱいで拍手が出来るように努力をしなくてはいけない街。

そのハリウッドでトップを走り続ける男優ラッセル・ク☆ウは、ハリウッドのヤリチンとして名高い。名声ここにありきという振る舞いらしい。

共演した女優を片っぱしからベッドインするヤリチンぶりだ。

比較すること自体はばかられるのだけれどハリウッド俳優の彼もまた、上述したヤリチン特有の気質をふんだんに持ち合わせた人物で、つまりは、ぜってー無理でしょっていう逸材に対してガチで勝負しようとする。

でもそこはハリウッド。市井の人には醸し出せないワンランク以上もハイクラスな名試合を残している。

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カムアウトするしないの以前に、公然の秘密という名のもとに3億人ぐらいがすでに知っていたジョディ・フォ☆ターのレズビアンネタというのがある。噂とか都市伝説とかいうレベルをすっ飛ばして、みんなが知っている暗黙の了解ってやつだ。ハリウッド界隈では、ひよっこエキストラでもご存知な周知の事実である。

こんな非の打ちどころのない鉄のカーテン状態であるオアシスを目指し、共演女優を喰うことで名高いラッセル・ク☆ウは、ヤリチン界のトップセールスマンとして、その事実を知っている上で無茶を承知にジョディにアタックし、そして散った。

讃嘆を捧げられるとすれば、彼のような挑戦者に対して捧げられるのだろう。

しかしただ負けたばかりでは、生き馬の目を抜く銀幕世界ではサバイブしていけない。

俺はスポっとハメるのが商売なんだぜと言ったか、スポットライトを浴びるのが商売なんだぜと言ったかどうかは定かでないにしろ、股間にはさわれなかったとしても沽券にはかかわるのだ。

だから彼は果敢にも試合に挑んだ者として、ある言葉を後日友人に残した。

「彼女はプレイするリーグが違う」

トップ オブ ヤリチンだからこそ放てるこの負けセリフ。109対0で負けるよりも重みのある言葉。悔しさなんてどこ吹く風。

行ったこともないハリウッドがグッと近づいた気がした。

僕も何かに負けたとき「プレイするリーグが違った」と言葉を残して退場したい。

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投稿者 ko : 2008年01月08日 19:19 | トラックバック(0)
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