90年代の中頃、渋谷のセンター街で、リーバイス646と呼ばれる時代錯誤なベルボトムを穿いてエンジニアブーツを決めこみ、日がな地べたに座りこんでいた十代の若者(アメリカだったらコジキ寸前)が闊歩した。
彼らのあいだで流行ったアイテムが幾つかあり、そのなかでも特殊だったのが香水だった。
そのファッションスタイルとはよほど程遠いだろう、シャネルのエゴイストが渋谷センター街の一世を風靡した。あるいは同じくシャネルのアンティウス。僅かな期間であったにせよ、この2つが渋谷を代表する香水だった。やがて半年ぐらい経つと、ギラロッシュのドラッカーが主流となり、ckとかが台頭した。
わけも分からずに香水をつけていたので、みんな5プッシュぐらいして、ぷんぷんな状態であった。僕もエゴイストとアンティウスが最初の香水で、ちょっと多めに7プッシュぐらいしていた。クラクラである。
そんな流行がキッカケとなり、一時は随分と香水を集めたものだ。
ネット未到来時代の日本未発売ものがウハーなご時勢に、知り合いがNYに行くとなれば、限定品を土産に頼み、タイを訪れるたびに新作を探した(そう、どういうわけか、タイは日本未発売の香水がゴロゴロしているのだ)。その収集癖の影響で、何年も経つのに、いまだ使いきれていない香水が押入れにゴロゴロしている。
ダビドフのクールウォーターは随分と長い間、愛用していた香水で、発売の年にバンコクで購入した。これは2本所有していて、なんだかんだで一昨年まで愛用していた。クールウォーターがなくなってからは、ちょっと整理整頓しようと、溜まりまくっている香水を使いはじめた。
最近になってようやく片がついてきたので、久しぶりに香水屋さんを訪れたら、まさに<ひとめぼれ>にピッタリな一品がでてきた。95年にサイアムスクエアでckのoneを嗅いだ以来の衝撃である。目がトロトロしてしまうユニな香り。収集癖が再発しそうな勢いだ。